住宅の規模にもよりますが、注文住宅は検討から引き渡しまでにおよそ9ヶ月~15ヶ月かかるといわれています。
流れとしては大まかに【情報収集】【資金計画】【契約&仕様打合せ】【工事】【入居までの手続き】の5つのフェーズに分かれ、それぞれの期間の目安としては【情報収集】に2ヶ月以上、【資金計画】に1ヶ月ほど、【契約&仕様打合せ】に4ヶ月以上、【工事】に4ヶ月~6ヶ月、【入居までの手続き】に1~2週間ほどになります。
ただし、順調にスケジュール通り工事が進むこともあれば、天候不順が重なり工事が予定通り進まないなど建築作業の遅延が発生することもあります。新型コロナウィルスが流行した時には、現場の人間が罹患し作業が止まってしまったり、建材の流通が一部止まってしまうなど、作業スケジュールの大幅な乱れが発生しました。そのため、いつまでにマイホームが欲しいなどの人生設計を組み立てている方は、予定に余裕が持てるように早めにスタートしておくとよいでしょう。
このページでは、注文住宅を建てるまでにお客様が行う必要があることや流れをまとめてみました。(※細かい建築工事の内容などは割愛しています。)事前に起こることや行わなければならないことが分かっていると、幾分か心持ちが楽になりますので、ぜひ家造りの参考資料としてご活用ください。
【土地の希望条件の一例】
土地は後から変更が効かない部分で、条件によっては建物の間取りや設計に制限がかかる場合があるため、建物よりも先に希望条件を洗い出しておくのがオススメです。
◯ 水害や地震など災害に対する強さ
・ハザードマップによる災害想定や過去の浸水履歴
・地盤の強さ
・土地の高低差
・周辺が木密地域でないか
◯ 移動・交通網へのアクセスの良さ
・職場までの距離
・最寄り駅・バス停・ICまでの距離
・接道状況
・坂の多さ
◯ 安全性や暮らしやすさ
・治安の良さ
・車や人通りの多さ
・隣家までの距離
・スーパーやコンビニなどの買い物施設までの距離
・生活インフラ(電気・上下水道・ガス・通信)の引き込み状況
・日当たりの良さ
・騒音や悪臭がないか
・ゴミ捨て場までの距離
・街並みや景観・眺望
◯ 教育・医療・公共施設
・学区(一番近い学校でも学区が違うと通えない場合もあるため注意が必要)
・幼稚園や小中学校までの距離
・病院や公園、役所までの距離
・自治体のサービス
◯ 設計や間取りの自由度
・用途地域
・土地の広さ
・土地の形
・樹木・電柱・ガードレール・縁石・消火栓など障害物の位置
◯ 法的に問題ないか
・抵当権が抹消されているかどうか
・境界線がハッキリしているかどうか
◯ その他気をつけたいポイント
・趣味を持っている場合、趣味の活動がしやすいかどうか
・商業施設の開発・新駅や路線開通・大学や病院、分譲地の開発・行政の都市計画などの地域の将来性
・新興宗教や反社会的勢力の施設、ゴミ屋敷、ペットの多頭飼育などトラブルメーカーの存在
・車にこだわりがある場合、ナンバープレートの地名
【建物の希望条件の一例】
どんな住まいで暮らしたいか、ざっくりと洗い出していきます。土地の広さや形、周囲の建物や接道状況などの様々な要因により、実際に「できる」「できない」ことがあります。しかし、「できる」「できない」の判断は専門家でなければ難しいので、この時点ではとりあえず「どんな家に住みたいか」を考えるだけで大丈夫です。
なお、その際は現在暮らしている住まいを基準と考え、不満な部分を洗い出すのも一つの手です。現在のお住まいで不満な部分は、裏返すと改善すべき部分となりますので、洗い出しておきましょう。その際は普段お住まいでしている行動単位で考えておくと漏れが少なくなります。
◯ 現在の住まいの不満な部分
・料理を作った時、盛り付けできるスペースも欲しい
・入浴時浴槽が小さく足が伸ばせないので、もっと広いお風呂にしたい
・夜トイレに行く時、足元を明るくしておきたい
・入浴後、汗をかかないように壁か天井に扇風機を設置できるようにしたい
・子供と遊んだ後、遊び道具を収納できるよう玄関の近くに大きなクローゼットが欲しい
・洗濯物を干す時、花粉や虫が付くのが嫌なのでバスルームの近くにランドリールームを設けたい
・ペットと散歩から帰った後、玄関からすぐにお風呂へ入れるようにしたい
また、現在の住まいで気に入っている部分も忘れずに洗い出しておきましょう。当たり前になっていることなので忘れがちな部分ですが、新しい住まいで「その仕様になっておらず、逆に不便になった」ということがないように、頑張って洗い出しましょう。
◯ 現在の住まいで気に入っている部分
・今のリビングは南側で明るいので、新しい家でも明るいリビングルームにしたい
・現在使っているトレーニング器具を置けるよう、新しい住まいの床もその重さに耐えられるようにしておきたい
・調理時ガスコンロを使い慣れているので、そのままガスコンロを使いたい
・現在使っている大きさの冷蔵庫を新しい住居でも使いたいので、搬入・搬出できるように通路の幅を持たせたい
・今のキッチンの高さが丁度よいので、新しい住まいのキッチンも同じ高さにしたい
さらに興味のある設備や部屋、将来的に発生する事態を想定して洗い出しを進めていくとよいでしょう。
◯ 興味のある設備や部屋、将来的に予想される部分
・子供の夜泣きで隣家に迷惑をかけないようにしたり、夫婦で交代して寝たりするために、寝室に防音対策を施してみたい
・書斎を使ったことはないが、子供が集中して勉強を行ったり、自分が集中して仕事をできるように書斎を作ってみたい
・子供が大きくなって友達を連れてきても、プライベートが保てるようにリビングの外に階段を設けておきたい
・現在洗濯物を天日干しにしているが、乾太くんを使ってみたい
・電気代の削減に興味があるので、太陽光発電やエコキュートを導入してみたい
・今まで路面駐車だったが、常にキレイな状態で車を保っておきたいのでビルトインガレージにしてみたい
・年老いた両親が一緒に住めるよう、バリアフリーにしておきたい
【注文住宅を購入する際にかかる費用の一例】
◯ 付帯工事費
付帯工事費とは家の建築以外に必要な工事費用のことで、以下のようなものが挙げられます。
・解体工事費(土地に古い家などの建物が残っている場合、取り壊すのに必要な費用)
・地盤改良費用(地盤が強くない土地の場合、地盤を補強するのに必要な費用)
・給排水工事費(土地に接する道路の下に埋め込まれている上水道本管を、家の内部から水道メーターや公共マスまで給水用の水道管を設置する工事の費用)
・外構工事費(門柱や柵、駐車場の舗装、庭など住まいの外側に当たる部分の工事を行うのに必要な費用)
◯ その他の諸費用
・税金(印紙税、登録免許税)
・登記費用(不動産の物理的状況[住所や面積、建物の構造など]や権利関係[所有権や抵当権など]を明らかにするために行う登記に必要な費用)
・建築確認申請費用(建築予定の住まいが法令の遵守が守っているか、指定確認検査機関が検査するための費用)
・水道負担金(水道の利用申し込みに際して水道局に納付する、新しく上下水道を設置するための費用)
・設計料(お客さまの要求や条件を整理し、法令上の制約条件を調査したうえで、設計図書を作成するための費用)
・監理料(住宅の新築工事が設計図書どおりに実施されているかを建築主の立場で確認するための費用)
・地鎮祭や上棟式の費用(家を建てる際の慣例的に行っている儀式を執り行うのに必要な費用)
・住宅ローン手数料、保証料(金融機関に支払う事務取扱手数料、住宅ローンを借りる際に金融機関が指定する「保証会社」に支払う費用)
・火災保険料(火災により家が失くなり、住宅ローンだけ残ってしまうという事態を防ぐための費用)
・引越し費用
・新居用の家具や家電の購入費用
【事前審査(仮審査)の意味】
◯ お金を貸す金融機関側
住宅ローン契約を結ぶ契約者が返済義務を全うすることができるか、もし返済が難しくなった場合は担保となる不動産で資金を回収することができるかなど、貸し倒れリスクを回避するために対象となる個人と不動産に対して審査を行います。この時金融機関は、年齢、家族構成、職業、お勤め先、仕事の内容、勤続年数、特殊な資格があるか、転職履歴、自己資金の割合、既存の借り入れ状況、過去のクレジットの利用状況・返済の延滞・キャッシングの利用状況等、様々な角度から審査を行い判断します。事前審査の場合でも通常3~4日程度の時間を要します。
◯ お金を借りるお客様側
不動産探し初期における事前審査では、「そもそも借りることができるのか?」「借りられる額はいくらくらいなのか?」「優遇金利はどれくらいなのか?」の目安を大まかに把握するためにお試しで申し込むという意味合いの強いものになります。これにより効率的に土地探しを行うことや、資金計画を立てることができるようになります。
気に入った不動産を見つけた場合の事前審査では、その不動産に対して本気で売主に買付を申し込むための手段という意味合いが強くなります。この時、人気のある不動産に対して同時に複数の買付申し込みが入った場合、売主側は「住宅ローンの事前審査を通った人(購入資金を準備できる可能性の高い人)」を優先的に選ぶ傾向にあります。そのため、事前審査の結果が早く分かるほど買いそびれるリスクが減ることに繋がります。
【工事請負契約の意味】
◯ ハウスメーカーや工務店側
建設業法上、建設工事の請負業者は工事請負契約書を作成する義務を負い、この時に定めた工事内容や建物の仕様通りに建築を行わなければなりません。
◯ 施主側
契約は一度交わしてしまうと、その内容を変更するのは難しくなるため、自分とハウスメーカーや工務店側が想定している住まいの仕様にそごがないか、契約書に記載されている内容に間違いがないか等をここでしっかりと確認しておきましょう。また、この後には建築確認申請が控えていますが、建築確認に影響があるような部分に変更が加わると再申請を行う必要が出てきます。例えば、耐震性などの住宅性能に影響を与えてしまうような、柱の位置や本数を含む構造計算がやり直しとなる変更などが、これに該当します。決して変更できないわけではありませんが、建築確認の再申請をすることで費用が嵩んでしまうことが想定されるため、工事請負契約の段階である程度プランを固めておく必要があります。
【面積効果には要注意!】
外観色・内観色決めではカットサンプルが使われますが、サンプルの色と実際の外壁・屋根の色とでは見え方が異なるため注意が必要です。これは「面積効果」と呼ばれる現象で、同じ色でも面積の大きさにより、彩度や明度が変化して見えてしまうからです。例えば明るい色は面積の広い方がより明るく見え、暗い色は面積の広い方がより暗くなってしまうといったような具合です。そのため「面積効果」を考慮した場合、明るい色はワントーン暗めのものを、暗い色はワントーン明るめのものを選ぶとイメージした外壁・屋根の色になります。
ただし、実際の外壁・屋根の色は周囲の外構や空の色などの影響を受けるため、室内で見るサンプルの色とは見え方が異なってきます。他にも家全体のテイストや色のバランス、外壁・屋根の素材感、建物や屋根の形、窓の配置、バルコニーの有無、家具や電化製品の色などにも左右されるため、専門スタッフとよく相談しておくとよいでしょう。
【決済では遅刻や忘れ物に注意!】
決済は早い時間(9:00~12:00)から開始するのが通例となっています。
通常、土地の場合では金融機関・買主(お客様)・売主(土地の所有者)の3者間で、建物の場合では金融機関・建築主(お客様)・建築会社の3者間で、「ローンの実行」「お支払い」「登記」の手続きが行われます。※司法書士の方には登記関係の手続きを行っていただきます。また、「ローンの実行」「お支払い」「登記」の手続きは、三者が不利益を被ることがないようにを同じタイミングで行う必要がある上、金融機関の着金確認や法務局へ土地や建物を登記申請できる時間帯は限られています。
そのため、もし遅刻してしまったり必要な持ち物を忘れてしまったり等で、その日のうちに決済とお引渡しが終えることができないと見込まれる場合、全員のスケジュールを再調整した上で日を改めることになってしまうわけです。
決済を行う場合は、前日までに決済とお引渡しに必要な持ち物の準備を行い、早めの就寝をするように心がけておきましょう。
【地鎮祭や上棟式はやるべき?】
地鎮祭や上棟式は昔からの風習で必ず行わなければならないというものではなく、行うか行わないかの判断は施主さまに委ねられます。しかし、今後その地で暮らしていくためのゲン担ぎのような意味合いや家族揃っての思い出作りにもなるため、金銭や時間に余裕があるようならば行っておくと良いでしょう。
なお、地鎮祭と上棟式には神事もしくは儀式という意味合いや、挨拶回りが控えていることを踏まえ、清潔感のある服装で臨むのが無難です。ただし、地鎮祭はまだ更地となっている敷地内で行われるため、足元が汚れやすいです。そのため動きやすく汚れてもいいような靴を履いていくか、おしゃれな靴とは別に準備しておくのがオススメです。
【現場を見ながら打ち合わせした方が分かりやすい箇所の一例】
・収納棚やカウンターなどの位置や高さ
・スイッチやコンセントの位置や数
・窓から見える風景に合わせた窓の意匠
【住まいの完成間際に行われる3重のチェック】
住まいの完成間際では、実は竣工検査を含む3重のチェックが行われます。竣工検査以外のものは「社内検査」・「完了検査」と呼ばれ、それぞれ検査の意味合いが違うものになります。
社内検査
ハウスメーカーや工務店目線で完成した建物の仕上がりに問題がないかに主観をおいた検査で、ハウスメーカーや工務店の責任者で行われます。続く完了検査・竣工検査でお客様や公務員や第三者機関にお見せできる状態になっているか、厳しく確認が行われます。
完了検査
法律目線で完成した建物の仕上がりに問題がないかに主観をおいた検査で、建築主事(建築物の審査確認・検査などを行う公務員)または指定確認検査機関の確認検査員で行われます。公的な検査となるため、完了検査に合格すると検査済証が交付されます。
なお、建築確認申請・中間検査・完了検査で取得した『確認済証』『中間検査合格証』『検査済証』、これらの書類は建物がきちんとしたルールで建てられたという証明になる大切な書類です。失くしてしまった場合、建物の購入後に増築や用途変更ができない、売却に支障が出るなどの問題が出る恐れがあります。建物の引き渡し時には、さまざまな書類が渡されるため、検査済証をもらった覚えがないという人も少なくありません。再発行が効かない書類となるため、引渡し時に書類があるのを確認した上で、貴重品として大切に保管しておくようにしましょう。
【引っ越し準備の流れの一例】
◯ 引っ越し2ヶ月以上前
持って行くもの・新しく用意するものの選定 ※新居に搬入できるサイズか要確認
不用品の処分(フリマサイトでの売却や知人への譲渡、粗大ごみの申し込み)をして、余分な荷物を減らしておく
◯ 引っ越し1~2か月前
引っ越しの日時決め ※引き渡しが済んでから1~2週間後に行われることが多く、引き渡し日は契約書に記載されます。
引っ越し業者の選定と予約
現在のお住まいの退去連絡(賃貸の場合)
家具・家電の配置決め
◯ 引っ越し1か月前
電気・ガスの手続き
◯ 引っ越し2~3週間前
たまにしか使わないものから荷造り
◯ 引っ越し1~2週間前
役所や公共機関への引っ越し手続き
・転出、転居届の提出
・印鑑登録の廃止手続き
・幼稚園や保育園、小学校や中学校や高校などの転園・転校手続き
・児童手当の住所変更
・後期高齢者医療被保険者証の資格喪失届および被保険者証の返却
・郵便物転送の手続き
・スマホ(携帯電話)の住所変更手続き
・インターネット回線の手続き
・NHKへの住所変更手続き
・水道の手続き
◯ 引っ越し1週間前
細かなものの荷造りをする
・新居ですぐ使うものは1箱のダンボールにまとめる
・引越し業者に渡さず、自分で運ぶものは避けておく
・引っ越し前日までに冷蔵庫の中身をカラにする
・引っ越し作業に必要な養生や保護グッズの準備
・自動車・バイク・自転車関係の手続き
◯ 引っ越し前日まで
新居の掃除・荷物の搬入の下準備
・搬入作業でキズが出来てしまった場合に備え、新居の各箇所(特に搬入経路となる出入口や通り道)を撮影
・クイックルワイパーや掃除機などで床に溜まっている埃やゴミを除去
・洗面台やお風呂の曇り止め塗布
・カーペットや保護マットなどの敷物を設置
・燻煙タイプの防カビ剤・防虫剤などの散布
・フローリングのコーティングやワックス掛け
◯ 引っ越し前日~当日
挨拶回り・旧居の部屋掃除
・旧居での引っ越しの挨拶
・敷金返還のために原状回復をする
◯ 引っ越し当日
荷物の搬出・搬入
・荷物の搬出
・荷物の搬入
・新居での電気・水道の確認、ガス開栓の立会い
◯ 引っ越し後~数日後
旧居を引き渡し、新居での挨拶回り
・契約者本人が立ち会って部屋を引き渡す
・荷ほどき
・新居の近所で挨拶回りをする
・挨拶状の送付
◯ 引っ越し後
各種手続きを早めに進める
・転入届の提出
・マイナンバーカードの住所変更
・国民健康保険の住所変更・加入
・国民年金の住所変更
・乳児医療証、小児医療証の住所変更
・後期高齢者医療制度の被保険者証の住所変更または受給申請
・敬老パスの住所変更または交付申請
・要介護認定の引き継ぎ
・印鑑登録
・運転免許証の住所変更
・銀行やクレジットカード、保険などの住所変更
・携帯電話の住所変更
・児童手当の住所変更
・各種保険の住所変更
・自動車・バイク・自転車関係の手続き
・その他の登録しているサービスの住所変更