陸屋根のメリット・デメリット
メンテナンス方法や採用時の注意点とは

2025/4/4 公開

陸屋根のメリット・デメリット|メンテナンス方法や採用時の注意点とは

注文住宅を建てる際、屋根の形状は住まいのデザインや機能性に大きく関わる重要な要素です。さまざまな屋根形状の選択肢の中で、フラットな形状が特徴の陸屋根(ろくやね・りくやね)は、スタイリッシュな外観になる点や屋上が利用できる点など、多くの魅力があります。一方で、排水や防水対策が課題となるため、適切なメンテナンスが欠かせません。快適な住まい作りを行うには、デメリットも理解した上で、対策を取る必要があります。

そこで本記事では、陸屋根のデメリット・メリットや維持管理方法、メンテナンスの費用相場、陸屋根の住宅を建てるときに押さえておきたいポイントを詳しく解説します。屋根選びで失敗しないために、ぜひ最後までご覧ください。

初めに、陸屋根のデメリットを押さえていきましょう。主に以下の4つが挙げられます。

  • 最上階の温度調整が難しい
  • 屋根裏スペース・ロフトを確保しにくい
  • 水はけが悪く雨漏りしやすい
  • メンテナンスの頻度が多い

それぞれ詳しく解説します。

最上階の温度調整が難しい

陸屋根は屋根と天井の間に空間がないため直接日射を受けやすく、夏場に最上階が暑くなりやすいことがデメリットです。屋根裏の空間がない分、熱がこもりやすく、温度調整が難しい傾向にあります。

しかし、断熱材を厚くする、断熱塗料を屋根に塗る、屋上緑化を行うなどの対策を取ることで、温度調整の問題を緩和できる可能性があります。陸屋根の構造を選ぶ際は、最上階の快適性を保つために、断熱対策を事前に検討することが重要です。

屋根裏スペース・ロフトを確保しにくい

切妻屋根や片流れ屋根のように勾配のある屋根形状の場合、屋根裏を収納スペースとして活用できます。一方、フラットな形状の陸屋根は、屋根裏に収納スペースをつくることが難しいです。陸屋根を採用した住まいで収納を多く確保したい場合は、設計時に施工会社と十分に相談し、しっかりとした収納計画を立てる必要があります。

水はけが悪く雨漏りしやすい

陸屋根はフラットな形状のため、勾配のある屋根に比べて水はけが悪く、雨水がたまりやすい点がデメリットです。水はけが悪いとコケやカビが発生しやすく、屋根の劣化が早まり、雨漏りの原因になることがあります。そのため、陸屋根を採用する場合は適切な防水処理が欠かせません。近年の防水技術は進化していますが、防水材料は経年劣化するため、定期的なメンテナンスが必要です。

メンテナンスの頻度が多い

陸屋根は平らに見えますが、実際には緩やかな勾配があり、雨水が排水口(ドレン)に流れる構造になっています。ただし、ドレンに汚れや落ち葉が詰まると雨水が流れず、雨漏りを引き起こす可能性があるため、陸屋根は日常的な清掃が欠かせません。また防水層も経年劣化するため、定期的な点検や必要に応じて防水塗装・シーリング補修などのメンテナンスを行う手間がかかります。

陸屋根のメリット

前述の通り陸屋根にはデメリットがいくつかありますが、もちろんメリットも複数あります。陸屋根を採用する主なメリットを5つ紹介します。

  • メンテナンスしやすい
  • 屋上やバルコニーとして使用できる
  • 室内を広く保てる
  • 風の影響を受けにくい
  • デザイン性が高くおしゃれ

それぞれ具体的に解説するので、メリット・デメリットを見比べて、陸屋根が自分たちのライフスタイルに合うかどうかを検討しましょう。

メンテナンスしやすい

勾配のある屋根に比べ、陸屋根はメンテナンスがしやすいメリットがあります。傾斜がないため足場の設置が不要で、簡単な掃除や点検であれば自分で行うことも可能です。ドレンの清掃や落ち葉の除去を定期的に行うことで、屋根をきれいな状態に保ちやすく、雨漏りなどのトラブルを防げます。陸屋根はメンテナンスの手間を軽減できる選択肢といえるでしょう。

屋上やバルコニーとして使用できる

フラットな陸屋根は、屋上やバルコニーとして活用できるのが大きなメリットです。生活スペースを屋上に広げられ、洗濯物を干したりガーデニングやバーベキュー、家庭菜園などを楽しんだりと多用途に使えます。日当たりが良く、開放感のある空間を楽しめる点も魅力です。近年では陸屋根を採用して屋上テラスを設置する住宅も増えており、スペースを有効活用したい人にとって、魅力的な選択肢となっています。

室内を広く保てる

陸屋根には屋根裏スペースがないため、天井を高く設計できます。天井を高くすれば開放感のある吹き抜けをつくったり、スキップフロアを設けて空間を立体的に活用したりすることが可能です。また3階建て住宅を検討している場合も居住スペースを最大限に確保できるため、広々とした住空間を実現したい場合は陸屋根の住宅を検討すると良いでしょう。

風の影響を受けにくい

陸屋根は風の影響を受けにくい屋根形状です。台風や暴風雨の際、勾配のある屋根では屋根材がひび割れたり剥がれたりするリスクがありますが、陸屋根であれば強風による被害を軽減できます。また屋根材が剥がれることで生じる雨漏りなどの二次被害も抑えられるため、自然災害対策の観点でも優れた選択肢といえるでしょう。特に、台風の多い地域などでは安心感があります。

デザイン性が高くおしゃれ

陸屋根は直線的なフォルムが特徴で、モダンで洗練された印象を与えるデザイン性の高さが魅力です。

シンプルでシャープな外観は、他の住宅とは一味違うおしゃれな雰囲気を演出でき、都会的な住宅に仕上げられるでしょう。また陸屋根と他の屋根形状を組み合わせることにより、さらに個性的で魅力的な外観が実現できます。

陸屋根はフラットな形状ゆえに雨水がたまりやすく、より入念な防水対策が必要です。さらに定期的なメンテナンスを行い、劣化や雨漏りのリスクを抑えることが不可欠となります。防水性能を維持するにはどのような方法が効果的なのか、また費用はどれくらいかかるのかを、詳しく解説していきます。

塗膜防水

塗膜防水は、液状の防水材料を直接塗布して施工箇所に防水膜を形成する工法です。

塗料が隙間なく広がるため、継ぎ目のない均一な防水層を作れ、雨漏りのリスクを軽減できます。また形状が複雑な場所にも対応しやすい点が魅力です。塗膜防水の耐用年数は8~10年程度、施工費用の相場は1平方メートル当たり5,000~9,000円程度です。

塗膜防水の種類には、液状のウレタン樹脂を重ね塗りして防水層をつくるウレタン防水と、プラスチックにガラス繊維などを混ぜた塗料でコーティングするFRP防水があります。ウレタン防水は広範囲の施工に向いており、コストも比較的抑えられます。

一方のFRP防水は、耐久性や防水性、気密性に優れていますが、コストはやや高めです。陸屋根の面積や予算に応じて適した方法を選ぶと良いでしょう。

シート防水

シート防水は、シート状の防水材を貼って防水層をつくる工法です。

一気にシートを貼るため塗膜防水と比べて工期が短く済むのが特徴で、広い面積の施工に適しています。また、1平方メートル当たり4,000~8,000円程度と比較的安価で、メンテナンス費用を抑えたい方にも向いています。

シート防水は、塩化ビニールシート防水とゴムシート防水の2種類です。

塩化ビニールシート防水は紫外線や熱に強く、耐摩耗性に優れているため、歩行頻度が高いベランダにも適した防水方法です。一方のゴムシート防水は、伸縮性が高い合成ゴムを用います。耐久性がありますが、塩化ビニールシートよりも素材が薄めで傷みやすい点には注意が必要です。シート防水の耐用年数は10~15年程度とされているため、劣化を防ぐためにも定期的な点検を心掛けましょう。

アスファルト防水

アスファルト防水は、液状のアスファルトとアスファルトシートを重ねて貼ることで高い防水性を発揮する工法です。

屋上防水工事の中では特に防水性に優れており、耐用年数も15~25年と長いのが特徴です。費用相場は1平方メートル当たり4,500~8,000円程度で、主にビルやマンションの屋上に多く採用されています。

アスファルト防水には、アスファルトシートをバーナーで溶かして貼り付けるトーチ工法と、改質アスファルトルーフィングという高耐久のシートを貼る常温工法の2種類があります。トーチ工法はニオイや溶解によるけがのリスクが少ないものの、職人の技術力が仕上がりを左右するため、信頼できる業者を選ぶことが重要です。常温工法はシートを何層にも重ねるため屋根に負担がかかることもありますが、作業しやすいメリットがあります。

陸屋根を採用する際のポイント

注文住宅に陸屋根を採用する際、注意したいポイントは主に以下の5つです。

  • 収納計画を立てる
  • 断熱材・断熱塗料を施す
  • 定期的にメンテナンスを行う
  • 実績豊富な施工会社に依頼する
  • 相見積もりを取って比較検討する

ここからは、それぞれの内容について詳しく解説します。

収納計画を立てる

前述の通り、陸屋根を採用する場合、収納スペースとして活用できる屋根裏空間がないため、事前に収納計画をしっかり立てておくことが重要です。

収納スペースが不足すると生活空間に物が溢れ、室内が散らかりやすくなるだけではなく、圧迫感も増してしまいます。家族構成やライフスタイルに合わせてどれくらいの収納量が必要か、どの場所に収納を設けるべきかを具体的に考え、暮らしやすい住まいを実現しましょう。

断熱材・断熱塗料を施す

フラットな形状で屋根裏スペースのない陸屋根の住まいは、直射日光を受けて屋内が高温になりやすいという課題があります。

この断熱性の低さは、断熱材や断熱塗料を適切に使用すれば軽減できるでしょう。断熱材にはさまざまな種類があり、建物の構造や気候に合ったものを選ぶことで、快適な室温を均一に保つことが可能です。また屋上緑化や太陽光パネルの設置も、断熱効果を高めるのに有効です。

定期的にメンテナンスを行う

陸屋根は雨水がたまりやすく、雨漏りや水漏れのリスクが高い傾向があり、定期的な点検で劣化やひび割れを早期に発見する必要があります。

前述の通り、メンテナンスには塗膜防水やシート防水などさまざまな方法があり、それぞれ耐久年数や費用が異なるため、事前に把握しておくと安心です。小まめなチェックと適切な対策で、快適な住まいを長く維持しましょう。

実績豊富な施工会社に依頼する

陸屋根は防水対策が重要であり、特に木造住宅の場合、施工不良が雨漏りなど深刻なトラブルにつながる可能性があります。

そのため、陸屋根の設置や防水工事は実績豊富な施工会社への依頼が大切です。安さや工期の短さだけで選んでしまうと、後々高額な修繕費がかかるかもしれません。施工会社を選ぶ際は、過去の施工事例や保証内容、防水加工の技術力などをしっかり確認し、信頼して任せられる業者を見極めましょう。

相見積もりを取って比較検討する

陸屋根の施工を依頼する際はすぐに1社に絞らず、複数の業者から相見積もりを取って比較検討することが重要です。

1社だけの見積もりでは、価格や工事内容が適正かどうかを判断しにくく、不当に高い費用や不十分な工事内容に気づけない可能性があります。複数の見積もりを比較することで、価格や施工内容の違いが見えてきて、信頼できる業者を選びやすくなります。後悔のない家作りのために、相見積もりを活用して慎重に検討しましょう。

陸屋根と勾配屋根の組み合わせは、個性的でスタイリッシュな外観を実現します。よりおしゃれに仕上げるために、機能性・デザイン性に優れた新しい屋根材のコロニアルグラッサを検討してみてはいかがでしょうか。

コロニアルグラッサは無機塗装によって色あせしにくく、長期間美しい外観を保ちやすい無機3層構造の屋根材です。

赤外線を反射する機能があり、屋根裏の温度上昇を抑制して夏場の室内環境を快適にします。陶器平板瓦の約2分の1の軽さであることも特徴で、住宅の耐震性向上にも貢献しています。カラーは黒やブルー系などの暗めの色が多く、黒に近い色の方が外壁と調和しやすくなり、スタイリッシュで洗練されたデザインを実現できるのも魅力です。

屋根材には多くの種類があり、それぞれに特徴とメリット・デメリットがあります。詳しくは以下の記事を参考にしてください。

注文住宅の屋根材【屋根の種類と製品】

陸屋根は、スタイリッシュでモダンなデザインの住宅を建てたい方におすすめの屋根形状です。また、屋上をバルコニーとして多目的に活用できる点も大きな魅力といえます。

ただし、雨がたまりやすい構造のため、雨漏りを防ぐにはしっかりとした防水対策が必要です。防水工事には高度な技術が求められるため、施工実績が豊富な会社に依頼すると良いでしょう。

神奈川・東京エリアで注文住宅をご検討の方は、タイセーハウジングにご相談ください。これまでに1,000棟以上の施工実績があり、陸屋根の家作りも多数手掛けています。各種カタログや施工事例集などの資料請求、家作りに関するお悩み相談が可能なオンライン面談などお気軽にご利用ください。