注文住宅の屋根材
【屋根の種類と製品】

屋根材

ここでいう屋根材とは住まい外部の屋根に取り付けられる仕上げ材のことを指します。
屋根は家に住む人間をさまざまなものから守っており、常に紫外線や風雨にさらされる部分なので、耐水性や耐候性・耐久性など素材そのものの強さが求められます。
また、住まいの上部に設置するものなので、屋根材が重いと重心が高くなり、地震の揺れが大きくなってしまいます。ここ30年を振り返ってみても、阪神・淡路大震災(1995年)、新潟県中越地震(2004年)、東北地方太平洋沖地震(2011年)、熊本地震(2016年)、北海道胆振東部地震(2018年)のように最大震度7を記録する地震が続いており、住まいが倒壊するケースも相次いでいます。そのため、住まいが受けるダメージも抑えられるように、近年では屋根の軽量性も重視されるようになってきています。

屋根材を大まかに分類すると、『金属系』『スレート系』『粘土系』『セメント・コンクリート系』『アスファルトシングル』があります。それぞれ特徴に違いがあり、どの性能に重きを置くかによって、採用すべき屋根材が変わってきます。それぞれの屋根材の性質を把握して、しっかりと選べるようにしておきましょう。

金属系の屋根材

金属系の屋根は他の屋根材に比べ、軽量で防水性が高いという性質を持っています。ただし、軽量化するために薄い素材を用いるので雨音が聞こえたり、金属であるため外部の熱が伝わりやすいことが挙げられます。しかし、現在では断熱吸音材を張り合わせることで、こういった弱点もカバーしている商品も登場しています。屋根材として使われる金属としては、『トタン』『ガルバリウム鋼板』『エスジーエル鋼板』『ステンレス』『銅板』『チタン』などがあり、住宅用としてコストが安くて耐久性のある『ガルバリウム鋼板』や『エスジーエル鋼板』が選ばれることが多くなっています。

トタン

トタンとは表面を亜鉛メッキで覆った薄鉄板のことを指します。歴史は古く安価で施工しやすいことから普及してきましたが、耐用年数が低く錆が発生しやすいので、現在では使われることが少なくなりました。

ガルバリウム鋼板

ガルバリウム鋼板とは、表面をアルミニウムと亜鉛と少量のシリコンを含んだメッキで覆った薄鉄板のことを指します。メッキ成分にアルミニウムが加わることにより、トタンに比べ耐用年数が伸びています。メッキ成分であるアルミニウム・亜鉛・シリコンの配合比をほんの少し変え、表面を石粒でコーティングしたジンカリウム鋼板というものも存在します。

エスジーエル鋼板

エスジーエル鋼板とは、表面をアルミニウムと亜鉛と少量のシリコンに加え、マグネシウムを含んだメッキで覆った薄鉄板のことを指します。メッキ成分にマグネシウムが加わることにより、ガルバリウム鋼板に比べ耐用年数が伸びています。ガルバリウム鋼板よりも錆びにくく、塩害の影響も受けづらいうえ、ガルバリウム鋼板と価格がほとんど変わらないため、次世代のガルバリウム鋼板として期待されています。

ステンレス

ステンレスとは鉄に一定量以上のクロムを含ませた合金で、腐食に対する耐性を持っているのが特徴です。施工できる業者が少ない・素材としての価格が高い・防音性や断熱性に劣る・表面が傷つきやすいなどの弱点はありますが、非常に高い耐久性を持っているため、体育館やホテルなどの大型施設等に使用されることが多い屋根材です。

銅板

銅は表面に緑青と呼ばれる緑色の錆が発生することで、内部の銅を腐食から保護する性質を持ちます。その耐久性や風合いから、古来より神社や仏閣の屋根材として使用されてきました。また、軽量で柔らかく加工もしやすいという特徴もありますが、素材自体の価格が高く繊細な施工が求められるため、一般住宅でも使用されることは少ない素材となっています。

チタン

チタンは強度も高く、耐食性もあり軽量と圧倒的な性能を持つ金属です。ただし、その性能ゆえに価格がとても高く、強度があるため加工が難しい金属でもあります。そのため大型施設や神社仏閣の屋根などに使われ、一般住宅で使われることはほぼありません。

金属系の屋根材

金属屋根の歴史は意外と古く、日本に金属屋根が登場したのは江戸時代。使われた金属は銅板で、当時の城や神社・仏閣、羽振りの良い武家や商人の住まいに導入された。

スレート系の屋根材

スレート系の屋根には『化粧スレート』『天然スレート』の2種類があります。現在ではスレートというと、一般的に普及している『化粧スレート』を指す場合が多いです。

化粧スレート

化粧スレートはセメントを主成分として、繊維素材を配合し薄い板に加工した屋根材を指します。人工的に造り出すため品質やサイズにばらつきが少なく、デザインやカラーのバリエーションも豊富です。価格も安価で施工できる業者も多いのも魅力です。ただし、化粧スレートは薄くて軽い分、強度的には割れやひびが入る可能性があります。また、スレート自体に防水性はないため、メンテナンスとして定期的に塗装を行い防水性を確保する必要があります。

天然スレート

天然スレートは粘板岩を薄い板状に加工した屋根材を指します。天然の岩から造り出し、海外から輸入する必要があるため非常に高価で、重量もあるため日本ではほとんど普及していません。

スレート系の屋根材

昔の化粧スレートはアスベスト(石綿)が使われていたが、現在アスベストは含まれておらず、代わりにガラス繊維や合成繊維などの短い繊維が使われている。

粘土系の屋根材

粘土系の屋根である粘土瓦は粘土を煉り合せて成形し、焼き上げられて造られる日本の伝統的な屋根材です。瓦は日本各地で生産されていますが、愛知県東部の『三州瓦』、島根県西部の『石州瓦』、兵庫県淡路島の『淡路瓦』が特に有名です。天然素材である粘土から造られるため耐久性が高く、耐火性・防水性・防音性にも優れています。ただし、屋根材の中では高価な素材で、重量のある素材であるため地震に弱いという弱点があります。また、粘土瓦は大きく分けて『陶器瓦(釉薬瓦)』『素焼き瓦』『いぶし瓦』の3種類があり、それぞれ性質が微妙に異なるので注意しておきましょう。

陶器瓦

陶器瓦とは表面に釉薬を使用し、高温の窯で焼き上げた瓦のことです。釉薬を使用することで表面にガラス層が形成され、水がしみ込みにくくなり耐久性が上がります。また、釉薬のおかげで様々な色やツヤを表現することできるのも魅力です。

素焼き瓦

素焼き瓦とは釉薬を使わず焼き上げた瓦で、独特の温かみのある風合いが魅力です。釉薬を使わないため吸水性があり、表面にコケが生えやすいデメリットがあります。また、長時間水に晒されると、瓦が吸った水がそのまま瓦の下へ抜けていくこともあるため、瓦の下に敷かれる防水材を二重に敷くなどの工夫が必要です。

いぶし瓦

いぶし瓦とは素焼き瓦をいぶすことで、表面に炭化膜が形成され、淡い銀色の風合いが魅力です。昔ながらの和風建築に使われることが多い瓦で、住宅に落ち着きや趣深さを醸し出してくれます。素焼き瓦と同様、釉薬を使わないため吸水性があり、表面にコケが生えやすいのがデメリットです。

粘土系の屋根材

和風建築にはかかせない粘土瓦。その歴史は古く、日本書紀によると西暦588年に朝鮮半島にあった百済から瓦博士が派遣され、瓦の製法を伝えられたとされています。

アスファルトシングルの屋根材

アスファルトシングルとは、ガラス繊維を基盤にアスファルトを浸透させコーティングし、表面に石粒を接着した屋根材です。薄くて軽く、柔らかいため施工しやすく、複雑な屋根の形状にも対応することができます。100年以上前にカナダで開発され、北米では高いシェアを誇っているメジャーな素材となっています。軽量なため地震に強く水密性も高い素材で、デザインのバリエーションの多さも魅力です。ただし、薄くて軽いことで強風に弱いことや、劣化により表面の石粒の剥がれがあることには注意が必要です。

アスファルトシングルの屋根材

アスファルトシングルは2007年の建築基準法改正により、屋根材としての使用することが許可された。日本では他の屋根材に比べ新しい屋根材であるため、普及率はまだまだ低い。

セメント・コンクリート系の屋根材

セメント・コンクリート系の屋根には、セメント瓦やコンクリート瓦(モニエル瓦)があります。前述のスレート系の屋根として紹介した化粧スレートも主成分はセメントですが、あくまで粘板岩の代替品として使用されたもので、屋根の厚みが1cm以下をスレート、1cm以上あればセメント瓦と判別してよいでしょう。

セメント瓦

セメント瓦は陶器瓦と一見見分けがつきにくく、陶器瓦より安価で製造しやすいため、高度経済成長期に広く普及した瓦です。セメント自体には防水性はないため、セメント瓦の表面には塗料が塗られています。そのためメンテナンスとして定期的に塗料を塗り直す必要があります。現在ではセメント瓦より優れた屋根材があるため、新規で用いられることはほぼありません。

コンクリート瓦(モニエル瓦)

コンクリート瓦(モニエル瓦)も主成分はセメントですが、セメントと川砂を混ぜ合わせて作られる「乾式コンクリート瓦」のことを指します。1970~80年代に人気となった輸入品の瓦屋根です。セメント瓦と同様に防水性を確保するため、定期的に塗料を塗り直す必要があります。こちらも現在では他に優れた屋根材があるため、新規で用いられることはほぼありません。

セメント・コンクリート系の屋根製品

現在では見ることも少なくなってきたセメント瓦だが、戦後のガリオア援助(アメリカが占領地の疾病や飢餓による社会不安を防止し、占領行政の円滑を図るために行った、陸軍省の軍事予算から支出した援助資金のこと)による「復興瓦」として、沖縄で普及した。

さらに見やすいように屋根材を素材別に性能比較表としてまとめてみました。ただし、屋根材の性能差は工法や断熱材の有無、下地材などで、その差を埋めることが可能なので、あくまで目安としてご覧ください。特にコストなどは需要と供給により変動が激しいので、ご注意ください。

屋根材 コスト 耐用年数 軽量性 遮音性 断熱性 保守頻度
トタン 4,500~7,000円/㎡ 10~20年 5kg/㎡ 7~10年
ガルバリウム鋼板 5,000~7,500円/㎡ 20~30年 5kg/㎡ 10~15年
エスジーエル鋼板 約6,500円/㎡ 30年以上 軽量 15~20年
ステンレス 10,000~14,000円/㎡ 30~50年 軽量 20~25年
銅板 18,000~23,000円/㎡ 40~50年 4.5kg/㎡ 25~30年
チタン 45,000~65,000円/㎡ 50年以上 軽量 25~30年
化粧スレート 4,000~7,000円/㎡ 15~30年 17.5kg/㎡ 10年
陶器瓦 5,500~15,000円/㎡ 40~60年 42.4kg/㎡ 20~30年
アスファルトシングル 5,000~9,000円/㎡ 15~30年 13.2kg/㎡ 10年
セメント瓦 5,000~10,000円/㎡ 20~40年 47.2kg/㎡ 15~30年

◎ 優れている / ◯ 普通 / △ 劣っている

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