2024/11/16 公開
光熱費を削減しつつ、快適な暮らしを実現する秘訣が「日射取得」と「日射遮蔽」にあることをご存知でしょうか。太陽光を上手に取り入れたり遮ったりすることで、室内環境を最適に保つ方法です。窓の位置や種類、軒の長さなど、さまざまな工夫で実現できます。方角別の対策も知ることで、効果はさらに高まるでしょう。
本記事では、日射取得と日射遮蔽の基本から実践的な方法、そして省エネに欠かせない家の断熱まで、快適で経済的な住まいづくりのポイントを詳しく解説します。マイホームを建てようと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
日射取得・日射遮蔽とは、窓を通した太陽光の調整で室内環境を最適化する手法です。日射をコントロールすることにより、冬は暖かく、夏は涼しい室内が実現します。快適な気温だけでなく、温度を適切に保つことで光熱費も抑えられるのがポイントです。ここでは、住みやすい住まいを実現するためのパッシブデザインの概念から、具体的な日射コントロールの方法まで詳細に説明します。
日射取得と日射遮蔽を知るには、まずパッシブデザインを理解しておくことが重要です。パッシブデザインのパッシブ(passive)には消極的・受動的という意味があり、積極的・能動的を意味するアクティブ(active)の反対語です。ここでいうパッシブデザインとは、機械に頼らず、太陽光や風など自然の力を活用して快適な住環境を作り、光熱費の削減にもつなげる設計手法を指します。パッシブデザインの代表的な施策は次の5つです。
パッシブデザインの主な施策
以上のうち特に日射遮蔽は、窓ガラスを通して入る日光や熱い空気を効果的に遮断する手法です。適切な窓の配置や高性能なガラスの使用により、電力消費の大きいエアコンの使い過ぎを防ぎます。パッシブデザインを取り入れることで、光熱費の削減や季節を問わない快適な暮らしの実現が可能です。自然と調和した住まいづくりで、エコで経済的な生活につながります。
日射取得とは、窓ガラスを通して太陽の光と熱を室内に取り込む手法です。冬の寒さ対策として効果的で、自然の力を利用して室内温度を上昇させるのが目的の一つです。適切な日射取得により、暖房器具の使用を抑えつつ、快適な室内環境を維持できます。ただし夏場の過度な日射取得は、室温が上昇し過ぎる要因になります。熱中症のリスクもあるため、季節や時間帯に応じて上手にコントロールすることが重要です。
日射遮蔽は夏の猛暑を乗り切る重要な対策です。窓から差し込む強烈な日差しを遮り、室内の温度上昇を抑えます。寒い冬の日射取得も室内を暖める点で有効ですが、一般的には夏の暑さ対策を優先して考えるべきでしょう。夏の日射遮蔽は日傘のような即効性がありますが、冬の日射取得は外気温が低いケースでは十分な暖房効果を得られない可能性があるためです。
適切な日射遮蔽を行うことで、真夏日や猛暑日の室温急上昇を効果的に抑制できるため、エアコンの稼働時間や設定温度を抑えられ、冷房費の削減にもつながります。また強い日差しを遮ることで、家具や床の日焼けを防ぎ、色あせや劣化を抑えられるでしょう。日射遮蔽には夏の快適性向上、省エネ、家計の節約などさまざまな利点があります。
日射取得と日射遮蔽を効果的に行うには、適切な方法の選択が重要です。快適な室内環境を実現し、省エネにもつながる日射コントロールの手法を解説します。
窓からの日射をコントロールするには、軒や庇の長さが重要です。特に南側では、夏は強い日差しを遮りつつ、冬は暖かい太陽光を取り入れられる長さとして、60〜90cmで検討するのがおすすめです。一方、東・西・北側には日射の影響が少ないため、主に雨よけやデザイン要素として軒や庇を設置します。
日射をコントロールする効果的な方法としては、ブラインドなどの日よけの活用もあります。ブラインドは後付けが可能で、季節や時間帯に応じて細かく調整できるのが利点です。
ブラインド以外にも、カーテンや植木による葉陰なども選択肢になります。植木は自然な日よけに使える上、緑の潤いも提供してくれます。適温でくつろぎながら、リラックスできる時間を実現できるでしょう。
窓ガラスの大きさや種類の使い分けも、日射コントロールの要です。窓のサイズは、日射角度に合わせて設計します。夏の高い位置から注ぐ太陽光を遮りたい場合は小さめのサイズとし、冬の低い場所からの日射取得を重視するなら、足元まで届く大きめサイズの窓がおすすめです。
さらに窓ガラスの種類には、日射取得型と日射遮蔽型があります。ガラスが2枚以上ある複層ガラスの表面に金属膜をコーティングする「Low-Eガラス」の技術を活用したもので、コーティングを施す位置によって機能が変わります。複層ガラスの室外側に金属膜を付けると日射遮蔽型となり、室内側にコーティングを施した窓ガラスが日射取得型です。
南側には日射取得型、東西には日射遮蔽型の窓ガラスを設置するのが一般的とされています。しかし、南側でも夏の暑さ対策として遮蔽型が適する場合もあります。窓にはさまざまなタイプがあり、立地や環境に応じて適切に選ぶことが快適な住環境につながるでしょう。次の章では、目的別の窓のタイプとそれぞれのメリット・デメリットを詳しく解説します。
窓のタイプは日射取得や日射遮蔽、通風、景観など、目的に応じて適切な種類を選ぶのが重要です。代表的な窓のタイプとその特徴を紹介し、それぞれの用途や効果を解説します。
FIX窓は、開閉機能のない固定式の窓です。気密性が高いため冷暖房効率に優れており、エネルギー消費の削減につながります。開け閉めする手間がかからず、メンテナンスが簡単で、防犯上でも安心です。子どもの転落事故も防げ、主に採光を確保したい場所や、デザインに取り入れたいケースで有効です。大きな窓を設置することで、開放感のある空間づくりにも効果を発揮します。
ただし開閉できないため通風の確保はできず、室内に湿気のこもりやすい場合は向いていません。浴室や洗面所など、水回り周辺での設置は避けるのをおすすめします。FIX窓を選ぶ際は、快適で省エネにもつながる断熱性能の高い製品を選ぶのがポイントです。
すべり出し窓は、窓枠の上下または左右を軸にして開閉する窓です。上下にレールが設けられ、レールに沿って窓が外側に滑り出しながら開くタイプを縦すべり出し窓、左右にレールがあるタイプを横すべり出し窓といいます。
すべり出し窓は、大きな開口部は必要ないものの、通風を確保したい場合に適しています。特に縦すべり出し窓は、90度まで開くため、風を取り込みやすいのが利点です。省スペースで設置できることや、デザイン性の高さもメリットになります。
ただし大きく開くすべり出し窓は、子どもが身を乗り出してしまう危険性があるため、2階など高所での使用は避けるのが無難です。また網戸の扱いにもやや不便さがあります。すべり出し窓の場合、網戸は窓の内側に設置されます。窓を開けてから網戸を閉める、あるいは網戸を閉めてから窓を閉める必要があり、開閉する間に虫が侵入してしまうこともあるでしょう。
引違い窓は、左右の窓枠がスライドして開閉するタイプの窓です。片方の窓を固定する片引き窓もありますが、両方の窓枠がスライド可能な引違いタイプが一般的です。
引違い窓の大きな特徴は、サイズや規格のバリエーションが豊富な点にあり、他の窓タイプと比べて比較的安価に入手できます。開口部の調整が自由にできるため、大きな開口が必要な場合にも適しており、リビングや寝室など多様な用途に対応できるのも利点です。
ただしFIX窓やすべり出し窓と比較すると、断熱性能や気密性能にやや劣るのがデメリットになります。エネルギー効率を重視する場合は、高性能な製品を選ぶか、他の窓タイプを検討する必要があります。
掃き出し窓は、床面から天井近くまで達する大きな窓で、通常は引違い窓のように開閉します。大きな魅力は、室内から簡単に外部にアクセスできる点です。ベランダやテラス、庭との一体感が生まれ、開放的な空間を演出できます。大きな開口部により豊富な自然光を取り入れられ、明るく快適な室内環境を作り出せるでしょう。
一方で、開口部の大きさゆえに断熱性能が低下する傾向があり、省エネにつながりにくいのが課題です。また台風時に飛来物がぶつかる確率が高まることにも注意が必要です。1階に設置する場合は防犯面での不安も生じるため、不在時に施錠を徹底するなどのセキュリティ対策が重要になります。
上げ下げ窓は、窓ガラスを上下にスライドして開閉する窓を指します。上側の窓ガラスと下側の窓ガラスが両方可動するタイプや、上側は固定されていて下側だけが開くタイプなどがあります。
上げ下げ窓の魅力は、デザイン性の高さです。縦長のすっきりとしたラインが特徴で、モダンな印象を与えます。大きく開口しないため引違い窓などに比べて防犯面でも優れており、換気しながら安全性を保てる点も利点です。戸車がないため、構造上気密性にも優れています。インテリアや外観のデザイン性を高めたい場合、上げ下げ窓はおすすめの選択肢です。
ただし引違い窓に比べると清掃がしにくかったり、カーテンを付けにくかったりするデメリットがあります。目隠しをしたい場合は、ロールスクリーンの設置などを検討する必要があるでしょう。
日射取得と日射遮蔽の効果は、窓がある方角によって異なります。南側、北側、東西方向それぞれの特性に応じた最適な対策を詳しく解説します。
南向きの窓は日射を適切に管理することが重要です。夏は強い日差しを遮り、冬は暖かな日光を取り入れやすくするための工夫が求められます。まず夏の太陽は高い位置にあるため、真南の窓では50〜90cmほどの軒や庇を設けることで、大きな窓でも十分な暑さ対策が可能です。ただし、南西や南東向きの窓では夏も低角度から日差しが入りやすいため、ブラインドの設置や植栽など、追加の遮蔽対策を検討すると良いでしょう。
一方、冬の暖房効率を高めるには、南側の窓を大きくし、日射取得型ガラスを使用するのが効果的です。これにより、自然の力を活用した快適な室内環境を実現できます。
このように、軒や庇の長さ、窓の大きさや種類を適切に選ぶことで、エアコンに頼り過ぎることなく、自然の力を活用して快適な住まいを作り出せます。
北側の窓は直射日光が入らないため、主に採光と通風の役割を担います。日よけ対策は必要ありませんが、冬の寒さ対策が重要になることから、窓ガラスには断熱性の高い日射取得型ガラスの使用がおすすめです。日射取得型のガラスは、室内の熱を逃がしにくく、外からの冷気も遮断するため、自然光を取り入れながら室内温度を快適に保てます。
東西向きの窓は、朝日と夕日からの強い日差しに注意が必要です。太陽が低い位置にあるため、通常の軒や庇では十分な遮蔽効果が得られません。外付けブラインドやアウターシェードなど、季節や時間帯に応じて柔軟に調整でき、細かな日射コントロールを可能にできる物の設置がおすすめです。特に西向きの窓は、午後の強い日差しと熱気を直接受けるため、室温上昇に注意が必要です。日射遮蔽型ガラスの使用や、植栽による日よけ効果などを活用すると良いでしょう。
快適な室内環境を実現するには、日射取得と日射遮蔽を考慮して窓のサイズや性能を決めるだけでなく、家全体の断熱性能を考慮することも重要です。いくら高性能な窓を採用しても、外壁や基礎部分から室内の熱が出ていくため、室温を適切に保つのは困難です。外壁や屋根、床など、建物のあらゆる部分で高い断熱性能を確保することが重要になります。
タイセーハウジングの家では、優れた断熱性能と効率的な換気システム、高断熱サッシの組み合わせにより、40度を超える猛暑でもエアコン1台で快適な室内環境を維持できます。高性能な住宅の快適さは、実際にモデルハウスで体感できますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。断熱性能の重要性を理解し、快適で省エネな住まい作りを目指しましょう。
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日射取得と日射遮蔽の適切なコントロールは、快適で省エネルギーな住まいの実現に不可欠です。窓の選択、方角別の対策、そして建物全体の断熱性能向上が重要です。
タイセーハウジングでは、屋根から床、外壁、玄関に至るまで高度な断熱技術を採用し、風通しや採光も考慮した設計を提供しています。これにより、四季を通じて快適な室内環境の実現や、光熱費の削減につながります。
神奈川県厚木市、東京都世田谷区を拠点にしたタイセーハウジングは、地域密着型の工務店として支持を得て、これまで1,000棟以上の住宅をお引き渡ししてきました。快適な家作りは、豊かな暮らしへの第一歩です。高性能な住宅を提供するタイセーハウジングに、ぜひ一度ご相談ください。