坪庭のある注文住宅
メリット・デメリットやおしゃれな取り入れ方を紹介

2024/9/14 公開

坪庭のある注文住宅|メリット・デメリットやおしゃれな取り入れ方を紹介

現代の住まいにおいて、坪庭のある注文住宅が注目を集めています。限られたスペースを有効活用しつつ、家の中に自然の風景を取り込むことができる坪庭は、日本独自のデザインです。静かで落ち着いた空間であり、眺めているだけでリラックスしたひと時を過ごせるでしょう。

本記事では、坪庭のある注文住宅のメリット・デメリットやおすすめの設置場所、設計時の注意点などについて解説します。おしゃれな建築実例も紹介しますので、理想の住まいづくりに役立ててください。

坪庭とは、壁や塀などに囲まれた1~3坪ほどの小さな庭のことです。平安時代、貴族の住まいである寝殿造りで「壺」と呼ばれる空間に木を植えたのが始まりで、民家に取り入れられるようになったのは安土桃山時代からといわれています。間口が狭く奥に長い京都の町屋では、家の中の採光性・通風性を高めるために普及しました。坪庭は眺めて楽しむだけでなく、住宅の機能面においても重要な役割を果たすスペースといえます。

坪庭には庭石や砂利などを敷き、草花・木・竹・灯籠などを配置して、日本庭園のようにデザインするのが一般的です。近年は和風のデザインにこだわらず、住宅のテイストや印象に合わせてデザインするケースも増えています。

坪庭のような小規模な庭をつくる際にかかる費用相場は、50万~100万円ほどです。建物の外に坪庭を設ける場合は外構工事となるため、後から追加することも可能ですが、建物で取り囲むスタイルの坪庭は設計時に計画する必要があります。また、中庭タイプだと建物の形状が複雑になるため、通常よりも建築費が高額になりがちです。

前述の通り、坪庭には眺めて楽しむ以外にも、通風・採光を確保する役割があります。何のために坪庭をつくるのか、敷地内のどこに設置するのか、広さやデザインはどうするのかなど、さまざまな要素によって費用が変動することを覚えておきましょう。

注文住宅に坪庭を取り入れるメリット

注文住宅に坪庭を取り入れることによって得られるメリットは、主に以下の通りです。

● 採光・通風を確保しやすい
● 開放感を演出できる
● 自然を感じられる
● プライバシーを守りつつ外部空間を楽しめる
● 景色を楽しめる
● 子どもの遊び場になる

暮らしを具体的にイメージできるよう、それぞれの内容について解説します。

採光・通風を確保しやすい

坪庭の設置には、採光や通風を確保しやすいという大きなメリットがあります。坪庭に面する壁面に窓を設けることで、家の中に光が届きやすく、室内を明るく保つことが可能です。窓の位置を工夫すれば、家全体に風の通り道もつくれます。住宅密集地や日当たりの悪い土地に家を建てる場合、特に効果的といえるでしょう。

「土地が狭くて庭をつくるスペースがない」というお悩みも、小さな坪庭であれば問題ありません。家の中で暗くなりやすい方角や場所に坪庭を取り入れれば、家の中の快適性を向上させられます。

開放感を演出できる

坪庭には、開放感のある空間を演出する効果があります。部屋の延長線上に坪庭が見えることで視界が広がり、狭い空間でも広々と感じられるためです。特に圧迫感が生じやすい廊下や玄関に取り入れると、開放感がアップします。

また、家族間でもプライバシーを大切にしたいと考える場合、建物を「コの字型」にしてくぼんだ部分に坪庭をつくるのがおすすめです。向かい合った部屋に適度な距離が保たれる上、視覚的な広がりが生まれます。カーテンやブラインドで目隠しをするような閉塞感がなく、室内空間がより快適になるでしょう。

自然を感じられる

坪庭があると、家で過ごしながら自然を感じられます。坪庭を通じて日常生活に自然の要素を取り入れられるため、リラックスできる空間づくりにおすすめです。

家の雰囲気に合わせて坪庭をデザインすれば、暮らしのアクセントにもなるでしょう。例えば、苔や庭石などを取り入れて和の雰囲気を楽しんだり、好きな草花を植えてイングリッシュガーデンのような雰囲気を楽しんだりと、気軽にデザインできることも、小規模な坪庭ならではの魅力です。

プライバシーを守りつつ外部空間を楽しめる

壁や塀に囲まれた坪庭には、外部の人が簡単に立ち入ることはできません。特に「ロの字型」に設計した建物に配置した坪庭は、周囲を自宅に囲まれた完全なプライベート空間です。「コの字型」の建物の場合も、フェンスなどで目隠しをすれば問題ありません。

朝、パジャマのままで自然の空気を味わったり、屋外でゆったりと読書や日光浴を楽しんだりと、外部からの視線を気にすることなくぜいたくに過ごせる空間です。

景色を楽しめる

坪庭のデザインや設置するアイテムにこだわることで、室内から景色を楽しむことができます。玄関周りや浴室の近く、リビングの周りに坪庭を配置すれば、帰宅時や入浴中、家族団らん中に、心身ともにリラックスできる空間になるでしょう。四季折々の草木や花を植えれば、季節ごとの変化を身近に感じられます。光の当たり具合を工夫することで、時間帯によって異なる雰囲気が楽しめる演出をするのもおすすめです。

子どもの遊び場になる

コの字型やロの字型の建物に設けた少し広めの坪庭は、安全な子どもの遊び場としても活用できます。坪庭を設置する際、道路に面した場所を避けることで、不審者の侵入や子どもの飛び出しといった事故を未然に防げるでしょう。

リビングやキッチンから目が届く位置であれば、プールやままごと遊びなど屋外でのびのびと楽しむ子どもの様子を、家の中で見守ることもできます。その他、バーベキューなどを楽しむ家族団らんの場としても最適です。

次に、注文住宅に坪庭を取り入れることで生じるデメリットを見ていきましょう。主に考えられるのは、以下の5つです。

● 設置・維持費用がかかる
● 建物面積が少なくなる
● 手間がかかる
● 建築費用が高くなりやすい
● 断熱性が下がりやすい

ここからは、それぞれの内容について解説します。

設置・維持費用がかかる

坪庭の設置には費用がかかる上、きれいな景観を保つためには定期的なメンテナンスが必要です。当然ながら、メンテナンスの手間と費用が発生し、業者に依頼する場合はさらにコストがかかります。掃除を怠ると窓の汚れや雑草が気になり、坪庭のメリットが生かしきれません。設置や維持にかかる費用を抑えるには、坪庭の面積をできるだけ小さくすることを検討する必要があるでしょう。

建物面積が少なくなる

坪庭を設けると、その分の居住スペースが削られます。十分な土地の広さがあれば問題ありませんが、限られた敷地では室内に圧迫感が生じるかもしれません。また、坪庭を無理につくると間取りが制限され、家事動線や生活動線が複雑になる可能性もあります。

坪庭は生活に必須ではない「ゆとりの空間」です。坪庭ありきで計画を進めるのではなく、必要な居住スペースを確保した上で坪庭を検討するようにしましょう。

手間がかかる

坪庭のデメリットの一つは、手入れに手間がかかることです。屋外にあるため、放置すると芝生や雑草が伸び放題になります。外部から風に飛ばされてきた枯れ葉やゴミがたまることもあるため、日々の掃除も欠かせません。また、窓が汚れていては美しい坪庭を観賞できないので、小まめにガラスを磨く必要もあります。管理が難しい植物を植えた場合は定期的に専門業者に手入れを依頼する必要があり、その手間もかかります。坪庭の手入れやメンテナンスをできるだけ少なくしたい場合は、手間のかからない方法で管理できる坪庭を検討するのが無難です。

建築費用が高くなりやすい

坪庭をつくるために建物をロの字型やコの字型にすると、外壁面が多くなる分、建築費用が高くなりやすいというデメリットがあります。また、坪庭に出るためのドアや窓を設置する必要があるため、材料費も増加します。これらの要素が組み合わさることで、坪庭の設置は全体の建築コストを押し上げる可能性が高いといえるでしょう。

ただし、坪庭の広さや設置場所、使用目的によって建築費用は大きく変動するため、単純に坪単価で比較することはできません。坪庭を設置する目的に応じて妥協点をつくるのも、建築費用を抑えるポイントの一つです。

断熱性が下がりやすい

坪庭を眺められるよう大きな窓を設けると、家の中の断熱性が下がりやすいというデメリットが生じます。ガラスは壁よりも熱損失が大きいため、断熱性を高める工夫が欠かせません。高性能な断熱材、ペアガラスやトリプルガラスといった高機能な窓は断熱性向上に効果的ですが、標準タイプに比べて高額です。坪庭のある注文住宅の建築費用が増える要因にもなり得るため、機能面と費用面のバランスを考慮する必要があるでしょう。

注文住宅で坪庭をつくる際におすすめの設置場所

注文住宅に坪庭をつくる際、設置場所に悩むケースは珍しくありません。坪庭の魅力や効果を最大限に引き出すには、次のような場所に設置するのがおすすめです。

● 玄関脇
● 浴室の外
● リビング周り
● 階段ホールの先

ここからは、坪庭の設置場所としておすすめの理由を解説していきます。

玄関脇

玄関付近を通る際に坪庭が見えるように配置すると、視線が外に向かい、広がりを感じられるようになります。玄関と客間が近い場合は、客間からも見える配置にするのがおすすめです。窓の配置も重要で、自然光が入るように工夫すると、狭く暗くなりがちな玄関が明るく快適な空間になります。季節を感じられる花や植栽を取り入れれば、お客さまを迎えるのにふさわしい魅力的な空間になるでしょう。

浴室の外

浴室の外に設置した坪庭は「バスコート」とも呼ばれます。浴室から坪庭を眺められるようにすることで露天風呂のような感覚を楽しめ、よりリラックスできるバスタイムになるでしょう。開閉可能な大きめの窓を設ければ、換気がしやすく、湿気やカビ対策にもなります。

ただし、開口部をつくると断熱性が下がるため、冬の寒さ対策が必要です。窓の性能や大きさ、設置位置など、事前にしっかり検討するようにしましょう。

リビング周り

リビングは家族が集まって多くの時間を過ごす空間です。リビングから眺められる位置に配置された坪庭は、家族に自然の安らぎと癒しを与える空間になるでしょう。「室内には植物を置きたくないが、インテリアにナチュラルテイストを取り入れたい」という要望にもピッタリです。

また、坪庭の部分を吹き抜けにすれば、自然光がたっぷりと差し込む快適なリビングになります。坪庭をインテリアの一部としてデザインするのがポイントで、日当たりを確保できるよう、設置するアイテムや樹木の大きさ・数などを吟味しましょう。

階段ホールの先

階段周辺には窓がなく、暗い空間になりがちです。2階に上がる階段ホールの先に坪庭を配置して、自然光をたっぷり取り込める窓を設けてみてはいかがでしょうか。蹴込み板のないスケルトン階段にすれば、階段を上る際に坪庭が目に入り、明るくおしゃれな印象を与えられます。また、階段下のデッドスペースを活用して、坪庭をつくるのもおすすめです。

坪庭のある家

タイセーハウジングが手掛けた坪庭のある家の建築事例をご紹介します。

建物をコの字型にレイアウトし、隣地との空間に小さな坪庭を設けた住まいです。坪庭の上部は吹き抜けになっており、坪庭に面する壁には全て窓を設置しました。1階のベッドルーム2部屋と、吹き抜けの上部に設けた窓からも、坪庭を眺めることができます。

坪庭のある家

窓からは光がたっぷり差し込み、家の中の風通しも良好です。日の向きによって坪庭に植えたシンボルツリーのシルエットが床に映り、優しく温かみのある雰囲気を感じさせてくれます。

住宅の写真はこちらからご覧いただけます。

おしゃれな坪庭のあるこだわりの注文住宅を実現するために、押さえておきたいポイントは以下の5つです。

● 家事・生活動線を考慮する
● 場所に合わせて植栽の樹種を選ぶ
● 排水計画を立てる
● メンテナンス面に配慮する
● 照明を使ってライトアップする

それぞれ詳しく解説していきます。

家事・生活動線を考慮する

注文住宅に坪庭を設ける際は、家事・生活動線を考慮することが重要です。坪庭があることで家事動線が悪くなったり、部屋間の移動が不便になったりする可能性があります。そのため、坪庭を優先するのではなく、部屋と部屋の移動距離や家族のライフスタイルを十分に考慮して間取りを決めることが大切です。まずは快適な住環境を維持できるよう、坪庭は家事・生活動線を妨げないように計画しましょう。

場所に合わせて植栽の樹種を選ぶ

坪庭をおしゃれにするためには、場所に合わせた植栽の樹種を選ぶことが重要です。坪庭をつくる場所によって日照条件が異なるため、場所ごとに適した木を選びましょう。例えば、北側など日陰になりやすい場所には、耐陰性のある木が適しています。

また、樹木の選定時には枝ぶりや樹形にも注意が必要です。大きく育つ木は小さな坪庭には不向きなので、地植えは避けて、鉢やプランターでコンパクトに育てるようにしましょう。

排水計画を立てる

水はけの悪い坪庭は植物に悪影響を与え、メンテナンスの手間も増えます。水はけの良い土を使用し、排水溝を設置するなどの排水計画をしっかりと立てることが重要です。

また、外部に排水できる配管設備を整える必要もあります。適切な排水場所を確保しないと雨水がたまりやすくなり、大雨のときに室内まで浸水するかもしれません。排水溝には枯れ葉やゴミが詰まりやすいので、小まめに取り除くなど、掃除を忘れないようにしましょう。

計画段階でこれらの点を考慮することにより、大雨に対応できる安心安全な坪庭が完成します。

メンテナンス面に配慮する

坪庭を美しく保つには、小まめなメンテナンスが必要です。例えば、雑草を生えにくくする防草シートを敷いたり、水はけが良くなるように基礎に水抜き穴を開けたりする方法があります。その他、汚れが目立つときにすぐに清掃できるよう、坪庭へと行き来しやすいドアや窓を設けておくと便利です。

照明を使ってライトアップする

ライトアップされた坪庭は、朝や昼とは異なる落ち着いた夜の雰囲気が楽しめます。スポットライトで植栽を下から照らせば、外壁に映る枝葉の影が幻想的な空間を演出してくれるでしょう。家の中から楽しむ際は室内の明るさを控えめにすると、ライトアップされた植栽が窓に反射することなく、きれいに浮かび上がります。また、光の調節が可能な調光ライトを使用すれば樹木に合う色味に調節できるため、季節で照明器具を交換する手間がかかりません。

なお、ライトを設置する場合は、屋外での使用になるため防水加工されたガーデンライトを使用しましょう。暗くなると自動的に点灯するタイプであれば、防犯対策にもなります。

坪庭は、日本に古くから伝わる「癒しの空間」です。庭といっても1~3坪ほどの広さでつくれるため、小さな土地でも問題ありません。間取りの工夫をすることで、十分な居住スペースと坪庭の両方を手に入れることが可能です。

ただし、坪庭を設けることで家の断熱性が低下したり、動線が複雑になったりする可能性があります。また、美しい坪庭を維持するには、メンテナンスのしやすさを考えることも重要です。満足のいく住まいを実現するには、坪庭のある注文住宅の実績が豊富な建設会社に相談することをおすすめします。

神奈川県厚木市・東京都世田谷区に拠点を置くタイセーハウジングでは、地域密着の工務店として1,000棟を超える住宅づくりに携わってきました。本記事で紹介した建築実例のように、坪庭のある注文住宅の実績も多数あります。施工事例集や各種カタログをご用意しているので、どうぞお気軽にお問い合わせください。