注文住宅のバスルーム
【バスルームの種類と製品】

浴室

浴室とは入浴するために使う部屋のことで、通常は浴槽や給排水装置、天井・壁・床、浴槽、カウンター、水栓金具、化粧鏡、照明、ドア、換気装置などから構成されています。最低限の機能として、お湯もしくは水を大量に使うため壁と床には十分な防水性能や、使用後の湿気対策として十分な換気性能が求められます。

ちなみに日本人は世界一お風呂好きな民族と知られており、①活動している火山が多いので温泉が多かった ②河川や山が多く水や燃料に恵まれていた ③高温多湿な夏、乾燥して寒い冬、花や新緑に彩られる春、紅葉に彩られる秋など四季それぞれの気候の中で違った楽しみがあった などの環境が整っていたことが要因だといわれています。

また入浴には下記のような効能があることも知られています。
温熱作用(血管が拡張され体内の血流が良くなることで新陳代謝が活発になる働きや、副交感神経が優位となり精神的にも安らぎ落ち着いた気分になる働き、毛穴が開き発汗することで老廃物や疲労物質の排出を促す働き)
静水圧作用(血中の水分が足に貯まることで起こった足のむくみを、水圧で体中に押し戻す働きや、水圧で促進された血行により、肩こりや腰痛を緩和したり、手足の冷えが改善する働き)
浮力作用(水やお湯の中では陸上に比べ体重が1/9程の重さになり、体を支えるための筋肉をほぐす働き)
清浄作用(皮膚の表面に付いたホコリや垢、皮脂を洗い流す働き)

これらの入浴しやすい環境や入浴自体の効能を体感していることから、日本人は入浴する習慣が出来上がっています。そのため、浴室は現代の日本人にとって生活の中になくてはならない重要な住宅設備となっており、浴室メーカーは日々しのぎを削り合いながら開発に取り組んでいます。

日本のお風呂の歴史①
日本では民族宗教である神道の影響で、川や滝で禊(みそぎ)が行われてきたと考えられており、入浴の下地が育まれてきました。

お風呂の慣習は6世紀に日本へ仏教が伝わった際、中国から伝わったといわれています。仏教には「お風呂に入ることは七病を除き、七福が得られる」という教えがあり、行基や空海、一遍などの僧侶による温泉の発見伝説も日本各地に残されています。そのため当時から体の汚れを落とすことは僧侶の大切な仕事と考えられ、多くの寺院で浴堂が造られ施浴が盛んに行われるようになりました。また、浴堂を持っていない庶民にも入浴の施しを行ったため、徐々に庶民にも入浴の習慣が広がっていきました。鎌倉時代、室町時代と時代が移り変わると、鎌倉や京都に「町湯(まちゆ)」と呼ばれる湯屋ができますが、貧乏な公家が町湯を利用するなど、まだまだ庶民が利用できるようなものではありませんでした。

江戸時代(1603~1868年)になると、ようやく庶民が広く利用できる「湯屋(ゆや)」と呼ばれる銭湯が登場します。初期の湯屋は蒸し風呂のようなもので、火種として薪や取り壊した家屋の廃材、火事の燃え残りの木材や市中のゴミも利用しており、当時のゴミ焼却施設の役割も果たしていました。また、江戸時代初期には、都市部の裕福な層の間で家風呂の一種である「据え風呂」を持つ人も出てきます。これは蒸し風呂ではなく、溜めたお湯に全身で浸かるスタイルで、関西方面で広まった五右衛門風呂(風呂釜の下から火を焚いてお湯を沸かすお風呂)や、江戸周辺では鉄砲風呂(浴槽の中に鉄管を差し込み、その鉄管を火で温めてお湯を沸かすお風呂)もこの頃に出現しています。

明治時代になると銭湯は蒸し風呂のスタイルから、板間に沈めた浴槽に湯をたっぷり入れて湯船に浸かるスタイルへ、洗い場は広く天井は高い造りとなり、現在の銭湯に近い見た目となります。さらに大正時代になるとタイルが使われ始め、昭和にもなると上水道が整備が進みカラン(蛇口)が取り付けられるようになる等、ますます現在の銭湯の造りに近づいていきます。しかし、昭和に入ってからも家風呂を持つ家庭はまだまだ少なく、夜・夕には家族揃って銭湯へ出かけるのが主流でした。(日本のお風呂の歴史②へ

現在浴室の種類は大きく分けて『システムバス』『在来工法』『ハーフユニットバス』の3種類あります。現在主流となっている浴室はシステムバスで、初期のものは野暮ったいデザインでしたが、現在は洗練されたデザインとなっています。また、機能的な進化も進んでおり、掃除やお手入れがしやすさや省エネ設計、よりリラックスして過ごしやすさにも快適性にも改良が加えられています。自分にとって最適な浴室を選べるように、どんな浴室があるか把握しておきましょう。

システムバス(ユニットバス)

あらかじめ工場で製造された浴槽・天井・壁・床などのパーツを現場で組み立てて設置される浴室です。工場で作られた精度が高いパーツを手順通りに組み上げていく仕組みなので工期が短く済み、その上水漏れなども起こりにくいのが特徴です。また、フラットなパネルになっているため、お手入れのしやすさもポイントです。しかし、メーカーがあらかじめ設計した規格のものになるため、浴室の大きさ次第では設置できないことや、他の家庭と似たようなデザインの浴室になりがちです。
現在のシステムバスは各社メーカーが鎬を削り合い、世代を重ねるたびにユーザーの要望を修正しブラッシュアップされたものになっているため、迷ったらシステムバスを選ぶとよいでしょう。

システムバス(ユニットバス)

発売当初のシステムバスはいかにもプラスチックな感じで質感に劣るものが多かった。しかし、現在では技術進歩したことで高性能かつ高級感のあるシステムバスが各メーカーから出ている。ただし、実際に浴槽に入ってみなければ分からないことがあるため、システムバスの候補を絞り込んだら各メーカーのショールームに行き、いつもの姿勢での入り心地も確認しておきたい。なお、その際はきちんと靴を脱いでおこう。

在来工法(現場施工)

コンクリートで壁や床を作り、モルタルと防水性に優れたタイルで浴室を仕上げていく浴室です。システムバスが出る前は在来工法で浴室を造るのが主流でした。一番のメリットは、浴室の形状や大きさに制限されることなく、好きな浴槽や好きな材質の壁や床を組み合わせ、自分だけの浴室に仕上げることができることです。
デメリットとしてはその場で組み上げていくため、どうしても工期が長くかかり、それに応じて工費がかかってしまうことです。さらに、浴室は水を扱う場所なので精密な施工が必要となるため、依頼する業者をしっかり選ぶ必要も出てくることや、経年劣化による水漏れのリスクも気をつけなければいけません。

在来工法(現場施工)

今はもう珍しいタイルで囲まれた浴室。システムバスのシェアが高くなっていく中で、現在では隙間なく施工できる腕のよいタイル職人も少なくなってきている。しかし、システムバスの規格には合わない広さの浴室や耐候性のあるタイルを活かした屋外の温泉など、こだわりのある浴室を造りたい場合には未だに欠かすことができない技術だ。

ハーフユニットバス

水がかかりやすい浴室部分(浴槽・洗い場・浴室の壁の下半分)をシステムバスにすることで防水性を高め、水がかかりにくい浴室部分(天井・浴室の壁の上半分)を在来工法にすることで独自性を出した浴室です。
システムバスの良さと在来工法の良さを組み合わせたものになりますが、取り扱いメーカーや製品自体が少ないのがネックです。また壁部分はシステムバスのように一体成型されていない状態となるため、継ぎ目部分の防水加工をしっかり行う必要がある分、システムバスに比べ防水性に劣っています。

ハーフユニットバス

浴室にオリジナル性を出したいけど、システムバスの機能性も持たせたい場合などにハーフユニットバスは有効だ。壁や天井の素材を自分好みの素材に選べるだけでなく、浴室の高さにも自由がきくようになるため、温泉やリゾート施設のような浴室を造ることも十分可能だ。

日本のお風呂の歴史②
日本のお風呂①から)敗戦後、日本では欧米文化が急速に庶民に浸透し始めます。また、昭和の高度経済成長期に伴い都市部への人口集中も進み、日本住宅公団の手により大型団地やニュータウンが数多く建設されるようになります。大量供給された住居にはステンレス流し台、ホーロー浴槽、洋風便器、据置型洗面ユニットなど先進的な設備も導入され、モダンな生活を夢見る家族にとっては憧れの的となりました。

そんな中、1963年には日本でFRP製(繊維強化プラスチック)のシステムバスが考案・開発されます。当時の日本では1964年の東京オリンピックの開催に間に合わせるため、選手団や観光客の受け入れに備えホテルの建設ラッシュが起こっていました。その内の一つであるホテルニューオータニは1058室を抱え、当時の技術では1000戸を超えるホテル建設には36ヶ月かかると言われていましたが、それを17ヶ月で建設する必要がありました。ホテルニューオータニの建設を受注していた大成建設は、工期の短縮化と浴室の軽量化を東洋陶器(現:TOTO)に依頼します。新工法により誕生したシステムバスは、それまで1室につき3週間~1ヶ月の工期を要していたものを、わずか3~5日の工期へ短縮することに成功するのでした。

工期を短縮することで人件費を抑え、工費も抑えることに成功したシステムバスは、製品をたくさん売りたいメーカーや少しでも安く購入したい消費者側にとって喜ばしいものでした。そのおかげで1970年代には集合住宅やマンションに急速に普及し、さらに各メーカーは戸建て住宅用システムバスの研究・開発を進め、1985年頃からは戸建て住宅にもシステムバスは採用されるようになりました。こうして家庭にお風呂があるのが当たり前のことになり、一般の住宅でも湯船に浸かり入浴を楽しめるようになりました。

家のお風呂が現在のような形となり、本格的に普及したのは昭和の経済成長期に入ってからのことなので、まだたったの60年しか経っていないが分かりますね。現在ではユニットバスの進化もさらに進み、浴槽のまたぎを低く、脱衣所から浴室への段差を低くしたバリアフリー化や、床表面に縦横に刻まれた床が水の通り道となり、排水溝へゆっくりと確実に誘導する仕組みを取り入れた『カラリ床』、魔法びんのように重断熱構造にすることで浴槽のお湯を冷めにくくした『魔法びん浴槽』など、機能性やメンテナンス性、省エネ性能を高めたユニットバスが登場しています。最近では湯船につかりながらテレビやスマートフォンを楽しむ人も増えており、もしかすると将来、また新しいお風呂のスタイルが生まれ、それが当たり前になっていくのかもしれませんね。

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