注文住宅のキッチン
【キッチンの種類と製品】

キッチン

キッチンとは主に料理を行うための場所のことで、効率よく料理をするために通常は下記のような設備が備え付けられています。

食材の下ごしらえや料理の盛り付けを行うためのワークトップ(調理台)
食材や食器、調理器具を洗うためのシンク(流し台)
焼く・煮る・蒸すなど食材に火を通すためのコンロ
食材や食器、調理器具などを保管するための収納
調理中の煙や臭いを排出するためのレンジフード
使い終わった食器を洗浄するための食洗機

これらの機能を持ったキッチンは構造もしくは規模別に大きく分けると、一枚板の天板によりすべての設備が一体化した『システムキッチン』、それぞれの機能がパーツとして分けられた『ブロックキッチン』、コンパクトにまとめた『ミニキッチン』の3種類があります。以前はブロックキッチンが主流でしたが、現在ではシステムキッチンが主流となっています。そのため、あえてブロックキッチンを新築戸建で採用することは少なくなりましたが、修理や取替が簡易にできることから間取りの変更もしやすく、事務所・テナントなどで多く採用されています。ミニキッチンも単身世帯用の賃貸物件などで多く採用されています。

システムキッチン
ビルトインキッチンとも呼ばれており、継ぎ目がなく統一化されたデザインなので見た目も美しく、液体や食材クズなども入りこまず、段差も無くてお手入れがしやすいなど、機能性も考えて設計されたキッチンです。さらに最近では食洗器・ゴミ箱などもシステムキッチンに組み込めるようになっているため、キッチンという空間自体をスッキリ見せることも可能です。デメリットとしては、全ての機能が一体化しているため部分的な交換が難しいことが挙げられます。全交換をする場合はもちろん、部分的な交換でも専門業者が必要になるため、修繕コストが高くなる場合が多いです。

ブロックキッチン
キッチンセットやコンビネーションキッチンとも呼ばれ、機能ごとに分けられたパーツを組み合わせることで、自分の好みのキッチンにすることができる自由度の高さが魅力のキッチンです。パーツごとに機能が分けられているため、故障などが発生した場合、その場所のパーツのみ取り替えるだけで済みます。デメリットとしては、一体化していないため液体や細かい食材クズなどを零してしまうと継ぎ目に入り込んでしまうことが挙げられます。ただし、設計思想も同じする同じメーカー・同じシリーズのもので揃えることで、継ぎ目や段差をある程度まで抑えることは可能です。

ミニキッチン
サブキッチンやハーフキッチンとも呼ばれており、通常よりも小さなシステムキッチンです。幅は90~150cmほどで、その中にキッチンとしての機能が詰め込まれており、単身世帯用キッチンや2世帯住宅でのセカンドキッチンとして使われることが多いです。そのコンパクトさ故に設置する場所を選ばないのがポイントで、様々な場所に設置することができます。しかし、コンパクトであるが故に調理スペースが小さく、本格的な調理には向いていません。

なお、このページ内では前述したキッチンの中でも現在新築戸建で主流となっているシステムキッチンについて主に説明させていただきます。

日本のキッチン(台所)の歴史
現在キッチンという言葉は日本中で使われていますが、元々は「台所」と言っていました。「台所」という言葉自体は、平安時代の貴族たちが食事をするための部屋の総称である「台盤所」(※当時食器を載せていた脚付きのお膳のことを「台盤」と呼び、台盤を並べて料理を盛り付けていた。)に由来しており、中世以降になって「台所」と呼ばれるようになりました。

江戸時代では、食材や食器などの洗浄は川や井戸端で行い、それを家に持ち帰り、木製の流しを使って台所仕事が行われ、明治時代になっても、床上に竈、土間に蹲踞(つくばい)式流しと、床の上に直接まな板を置き、座した姿勢で料理を行うスタイルでした。

大正時代になり大正デモクラシー(1910年代から1920年代のおおよそ大正年間にかけて起きた様々な、社会・文化・政治の活動の自由な運動、風潮の総称)が始まると、「生活改善運動」という国民生活の科学化・合理化を目指した動きが出てきました。台所における家事もそのひとつで、今までかがんで行っていた非効率な台所作業を、立って効率的に行おうという流れが出き始め、電気・水道・ガスの近代設備の整備もこの頃にようやく始まっていきました。

昭和に入ると、1956年には公団晴海団地のダイニングキッチンに初めてステンレス流し台が設置されました。従来はコンクリート製、もしくは木製のもので、ステンレス製の流し台は職人が一つひとつ手作業で溶接してつくっていたため、当時の一般的な流し台の5倍のコストがかかっていました。しかし、サンウェーブ工業(現:LIXIL)は自動車部品の製造に用いるプレス機械を使うことで、ステンレス流し台の一体絞り型シンクの大量生産に成功します。これにより、ステンレス製の流し台のコストを大幅に削減することができるようになり、全国へ急速に普及していきました。

その後、1973年にはクリナップが飯田橋のショールームに現在のシステムキッチンの祖となるドイツ風キッチンを展示しました。これ以降諸外国のビルトインキッチンが日本に参入し始め、流し台やコンロ、調理台や収納スペースまで各要素が一つの場所で完結したシステムキッチンは、日本人の生活様式に大きな影響を与えました。

各メーカーは様々な形状、レイアウトになっているシステムキッチンを開発しています。大きく分けると、『I型』『II型』『U型』『L型』『アイランド型』『ペニンシュラ型』に分けられ、それぞれ調理の効率や価格、コミュニケーションの取りやすさなどが変わってきます。どのようなものがあるか把握しておくと、自分にとって最適なキッチン選びの役に立つので、覚えておくとよいでしょう。

I型キッチン

コンロ、シンク、ワークトップなどの台所機能が一列に配置されたレイアウトのキッチンです。キッチンの機能を一列に集約することで、設置スペースをコンパクトにまとめることができるので、設置スペースの限られた住宅でも導入しやすいです。もちろんゆとりのある住宅でも、より多くのスペースを確保できるため、調理中でも動きやすくなります。他のレイアウトのキッチンより簡素な構造をしているため、キッチンの材料費や加工費を抑えることができ、比較的価格がリーズナブルなものが多いです。
デメリットとしては、キッチンが横に長くなるため、調理中横への移動距離が長くなってしまうことが挙げられます。さらに冷蔵庫や食器棚も横に配置することになりますので、思った以上に横への移動が長くなります。

I型キッチン

I型キッチンは壁に向かってキッチンを設置した壁付け式、ダイニングやリビングなどの居住スペースに向けて設置した対面式にすることも可能だ。

II型キッチン

コンロ、シンク、ワークトップなどの台所機能を二列に分けて配置したレイアウトのキッチンです。キッチンの機能を二列に分け、その間で体の向きを変えながら作業を行うことで、調理中の移動距離を短くすることができます。また、作業台スペースを実質2面使うことができるので、片方で食材の下ごしらえ、片方で調理作業など、2人での分担作業もやりやすくなります。
デメリットとしては、I型に比べ作業スペースが広くなるため、それだけの設置スペースが必要になることです。また、水場と調理場が分かれているので、洗った食器や食材などに付いた水滴が水場と調理場の間の床に落ちやすく、床材を水に強いものにするなど注意が必要です。また、I型よりもより複雑な構造で、必要な部材の量も増えていますので、I型よりも価格が高い場合が多いです。

II型キッチン

通常コンロとワークトップ、シンクとワークトップというような形で二列に分かれる。また、コンロの位置とシンクの位置を互い違いになっているため、夫婦がそれぞれコンロとシンクの前に立って作業を同時に行っても問題ない。

U型キッチン

コンロ、シンク、ワークトップなどの台所機能がアルファベットのU字型に配置されたレイアウトのキッチンです。U字型の中に入り体の向きを変えることで、同時に3面へアクセスすることが可能なので、効率的な動線で作業することができます。II型に比べさらに収納スペースや作業スペースが増えているのが特徴です。出入り口が1箇所しかないため、どちらかというと1人で複数の作業を行いたい人向けのレイアウトです。ただし、凹部分の幅が広めになっているものならば、十分複数人での作業も可能です。
デメリットとしては、II型に比べさらに収納スペースや作業スペースが増えている分、さらに大きな設置スペースが必要になることです。また、コーナー部分は手が奥まで届きにくく、デッドスペースになりがちなのですが、それが2箇所あります。そのためU型を採用する場合は、事前にコーナー部分のデッドスペースの使い道を考えておくとよいでしょう。価格はさらにII型よりも高い場合がほとんどです。

U型キッチン

作業スペースが広々としているため、一見すると複数人の作業に向いていそうなU型キッチン。しかし、作業スペースの分移動スペースは圧迫されがちで、単独で全方位にアクセスできるようになっているため、1人で並列作業を行うのに向いている玄人向きのキッチンだ。

L型キッチン

コンロ、シンク、ワークトップなどの台所機能がアルファベットのL字型に配置されたレイアウトのキッチンです。L字になっているため、I型ほど移動せずに各機能へアクセスすることができるのが特徴です。また、設置する向きを変えることで、壁付けにするか対面式にするかを選ぶことができ、好みや生活スタイルに合わせられる自由度の高さも魅力です。
デメリットとしてはU型同様コーナー部分ができてしまい、手が奥まで届きにくく、デッドスペースになりやすいことが挙げられます。ただし、L型の場合はコーナー部分は1箇所しかできないため、コーナー部分が2箇所できてしまうU型に比べデッドスペースになりにくいです。

L型キッチン

L型キッチンを導入する場合は、事前にコーナー部分のデッドスペースの使い道について考えておきたい。①ディスプレイスペースとしておしゃれな小物やタブレット端末の置き場所 ②スパイスラックや卓上ワゴンなどを設置し、調理の役に立つものの置き場所 ③調理家電(炊飯器やオーブンレンジ、電気ポッドや卓上食洗機など)の置き場所 ④コーナー部分自体にシンクやコンロなどの調理設備を作ってしまう など自分に合いそうな活用方法を考えよう。

アイランド型キッチン

キッチンを四方の壁から離して、「島」のように独立させたレイアウトのキッチンです。学校の家庭科室にあるキッチンを思い浮かべると分かりやすく、四方からアクセスできるため、大人数での作業に適しています。お互いに顔を合わせながら作業できるので、コミュニケーションも取りやすいのが特徴です。アイランドキッチンが空間の主役となるため、デザイン性の高いものを選ぶことで、キッチンという空間を格好良く見せることができます。
デメリットとしては、アイランドキッチンの周囲に通路、作業できるゆとりを持たせる必要があり、十分な設置スペースが必要です。また、壁などの遮蔽物がないため、アイランドキッチン自体が丸見えになりやすく、常に片付ける癖がないと乱雑になっているキッチンを他人に見せてしまうことになりかねません。他にも、基本吊戸棚をつけないため収納力には乏しいので、別途食器棚やスルータイプの吊戸棚などの収納を用意しておいた方がよいでしょう。

アイランド型キッチン

キッチンがスタイリッシュになるので憧れる方も多いアイランドキッチン。しかし、憧れと自分の料理スタイルと合うかどうかは別物だ。導入する前に、自分がアイランドキッチンで料理するとどのようなメリットがあるか、できるだけ具体的にイメージしておこう。

ペニンシュラ型キッチン

キッチンの左右どちらかを壁に付け、キッチン部分が「半島」のように突き出たレイアウトのキッチンです。アイランドキッチンと同様に、家族と顔を合わせながら作業をすることができるので、コミュニケーションが取りやすいのが特徴ですが、壁際にあることでアイランドキッチンとは微妙に性能が異なります。1辺が壁に接しているので、その分アイランドキッチンより設置スペースが少なくて済み、壁側にコンロが来るように設置することで、アイランドキッチンに比べ、部屋に臭いや油汚れが拡散しにくくなります。
また、目隠しを設けることで、乱雑になりがちなキッチンを隠すことも可能です。アイランドキッチンのように開放感に振り切らず、一部をクローズにすることによって使い勝手を向上させたものという位置づけになります。

ペニンシュラ型キッチン

ペニンシュラとは英語で「半島」を意味する「peninsula」から。このような対面型キッチンは1986~1989年頃の集合住宅における第5次マンションブーム以降から一般住宅へ浸透し始めたといわれている。

使い勝手の良いキッチンとは?
形状によるキッチンの種類を紹介しましたが、キッチンの使い勝手はキッチンの形状だけでは決まりません。あくまでキッチンの形状は使い勝手を決める要素の一部なので、他の要素についても確認しておくことが大切です。

『ワークトライアングル』の考え方
ワークトライアングルとは、シンク・冷蔵庫・コンロの前側の中心点を結ぶ作業導線のことで、ワークトライアングルを意識しながらキッチンのレイアウトを決めていくことで、台所の使いやすさが大きく変わってきます。基本的には、ワークトライアングルは正三角形に近い形をしているほど作業効率が良くなります。
また、3辺の長さの合計が3.6~6.6m(シンクの中心からコンロの中心までを120~180cm、コンロの中心から冷蔵庫の中心までを120~270cm、冷蔵庫の中心からシンクの中心までを120~210cm)の範囲内に収めるのが理想だといわれてます。これより長いと移動距離が長くなりすぎて疲れるキッチンとなり、逆に短すぎると窮屈になってしまい作業がしづらいキッチンとなります。

キッチンの高さ
キッチンは低すぎると調理や洗い物をする時の姿勢が前かがみになり、腰に負担がかかってしまいます。逆にキッチンが高すぎると調理器具などを無理に持ち上げる必要があるため、肩や腕に負担がかかってしまいます。適切な高さのキッチンを選ぶことで、台所作業をラクな姿勢で行うことができます。理想的なキッチンの高さは、「身長(cm)÷ 2 + 5cm」といわれており、日本工業規格(JIS)によりほとんどのメーカーで、80㎝・85㎝・90㎝・95cmの高さのものが用意されています。ただし、シンクの深さやコンロの高さ、スリッパやキッチンマットの有無やそれまで使ってきたキッチンの高さにより、人それぞれで適切な高さが微妙に異なります。可能ならば各メーカーのキッチンショールームへ出向き、実際にキッチンの目の前に立ってみた方が確実です。また、キッチンの高さは一度導入すると自由に変更がきかない部分なので、基本的には「キッチンにいちばん長く立つ人」を基準に考えるとよいでしょう。

キッチンの広さ
調理台(コンロとシンクの間)の理想は、60cm~90cmといわれています。まな板を置けるスペースだけではなく、同時に調味料や調理器具、下拵え前や下拵え後の食材を一時的に置けるような余裕があると便利だからです。
シンクの幅の理想は65~100cmといわれています。家族の人数やよく使う調理器具の大きさ・食器を洗う頻度によって変わってきますので、それに合わせて選ぶとよいでしょう。シンクの深さについては、直立して指を伸ばすとシンクの底に指が届く位が理想です。
コンロの幅の理想は60~75cmといわれています。コンロの幅は同時に調理を行う際、調理器具の取り回しに影響しますので、大きな鍋やフライパンを使用して同時に使用する頻度に合わせて選ぶとよいでしょう。

通路の幅
通路の幅は一人作業の場合は80~90cmが理想だといわれています。しかし、冷蔵庫や引き出しを開けた時や体格によっては窮屈になりやすいです。複数人で作業する場合は100~120cmが理想だといわれています。ゆとりを持って作業を行うことができますが、通路の幅を重視しすぎる余り、リビングやダイニングの面積を圧迫してしまうと本末転倒なので、キッチンの広さを考慮した上で、部屋全体の間取りを考えるようにしましょう。

冷蔵庫の位置
基本的にキッチンの入口付近に冷蔵庫が配置するのがよいといわれています。これは冷蔵庫をキッチンの奥まったところに設置してしまうと、調理中に他の家族が冷蔵庫からモノを取り出しづらくなってしまうからです。逆に冷蔵庫を見せたくない場合は、奥まったところに設置した方が目立たなくなりますので、キッチンの効率を重視するか見た目を重視するかで決めてよいでしょう。また、可能ならば冷蔵庫の設置スペースをあらかじめ間取りに組み込んでおき、設置したい冷蔵庫に必要なスペース(冷蔵庫の大きさや放熱スペース、開閉方向なども含め)があるか確認しておくとよいでしょう。

その他調理家電などの位置
基本的に効率的な調理の流れは以下のようになります。
【①食材を取り出し】⇒【②食材の洗浄】⇒【③食材の加工】⇒【④食材の加熱】⇒【⑤料理の盛り付け・配膳】⇒【⑥食事】⇒【⑦食器の洗浄】⇒【⑧食器の乾燥】⇒【⑨食器の収納】

調理の流れに沿うことで、動作を減らすことができるので、設備も調理の流れに従う形でレイアウトすることが大切です。
【①冷蔵庫や食品棚】⇒【②シンク】⇒【③調理台】⇒【④コンロ】⇒【⑤調理台・食器棚】⇒【⑥ダイニングテーブル】⇒【⑦シンクor食洗機】⇒【⑧調理台or食洗機】⇒【⑨食器棚】

また、キッチンではレンジ・オーブン・トースター・炊飯器などの調理家電やゴミ箱も調理の過程で必要になります。所持している調理家電の有無や使う頻度、必要になるタイミングに従い、設置場所を決めていくとよいでしょう。

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