注文住宅の窓・サッシ
【窓・サッシの種類と製品】

窓

ここでいう窓とは、窓ガラスとそれを取り囲む枠であるサッシで構成されている建材を指します。
窓という部位は、住まいで人間が快適に暮らせるように、採光・通風・換気・眺望などの役割があり、以前は透過性があることや、開閉が可能であることが最低限の機能として求められていました。
しかし、現在では住まいの気密化やエネルギーの高騰、犯罪の多様化や異常気象などにより、断熱性能・遮熱性能・防犯性能・気密性能・止水性能・耐火性能・耐風性能などさらなる性能が求められるようになってきました。なぜなら、住まいの開口部となる窓は、外壁に比べ熱や人、風や水などの出入り口になりやすく、住まいの弱点となり得る場所だからです。特に窓の断熱性能は重要で、アルミサッシ&単板ガラスのような構成の場合、冬の暖房効率は半分以上の暖気が窓から失われ、夏場の暑さは7割が窓から入ると言われています。そのような状態では、壁の断熱材にどんなに良いものが使われていたとしても、冷暖房のエネルギーが大幅に無駄になってしまいます。
そのため、窓も性能を吟味して選ぶ必要があります。まずは窓ガラスやサッシにどのような種類があるか確認し、自分に合うものを選べるようにしておきましょう。

建築用の窓ガラスやコップなどの食器に使われる一般的なガラスは、珪砂(シリカ)・ソーダ灰・石灰を主な原料とし、1500~1600℃の高い温度で溶かして混ぜ合わせ、成形後冷やし固めたものになります。珪砂をドロドロに溶かすには1700℃以上必要ですが、ソーダ灰を加えることで融点温度を下げ、石灰を加えることで水に溶けないようにしています。
日本では江戸時代頃から海外から輸入した窓ガラスが使われ始めましたが、世界的には古代ローマ時代(紀元前1世紀頃)には使われていたといわれています。当時の日本では障子の文化が発達していたため、それほど普及はしませんでした。しかし、明治以降にガラス工業が発達し、大正時代に起こった関東大震災で倒壊した建物を立て直す時に、多くの家庭でガラス窓を取り入れたことがきっかけで普及するようになりました。
現在の建築用の窓ガラスの種類としては大きく分けて、『フロート板ガラス・磨きガラス』『型板ガラス』『磨りガラス』『網入板ガラス』『複層ガラス』『強化ガラス』『合わせガラス』があります。窓ガラスは名前だけでは分かりにくい名称も多いため、それぞれの窓ガラスの特徴について押さえておきましょう。

フロート板ガラス・磨きガラス

フロート板ガラスとは普通板ガラスとも呼ばれ、きれいな平面をしており、最も広く普及しているガラスです。名称のフロートとは"float(浮かぶ)"の意味で、ガラスよりも比重の重い、溶けたスズの上に溶けたガラスを流し、自身の重みできれいな平面をもつガラス板を作り出す、フロート製法からきています。
フロート製法が確立する前にも板ガラスは存在していましたが、製造する過程でガラス面のゆがみができるため、磨いて平滑に仕上げる必要がありました。こうして製造されたガラスは磨きガラスと呼ばれますが、手間がかかるため現在ではほとんど製造されることはありません。

フロート板ガラス・磨きガラス

フロート板ガラスは「最も一般的である」という意味で普通板ガラスとも呼ばれる。なお、このフロート板ガラスの片面を研磨し、銀・銅・塗料でコーティングを施すことで鏡になります。

型板ガラス

型板ガラスとはガラスの片面にさまざまな型模様をつけられているガラスのことを指し、ロールアウト製法と呼ばれる、模様付きのローラーと模様なしのローラーの間に溶けたガラスを流し込む製法で製造されます。プライバシーを守るために使われるガラスで、粗くぼかされることで、内側ないし外側からの視線を遮ることができます。水に濡れても透明にならないため、浴室などでよく使われます。

型板ガラス

型板ガラスは厚みによって模様が異なり、2mmの薄型である『梨地』、4~6mmの厚型である『霞』がある。

磨りガラス

磨りガラス(すりがらす)とは表面に微細な凸凹をつけたガラスのことです。磨硝子、くもりガラス(曇硝子)、消しガラスとも呼ばれています。サンドブラストや金剛砂で擦る方法や、薬品で表面加工する方法などがあります。表面の微細な凸凹のおかげで光が拡散され、白くくもったような見た目になります。凸凹の面が水に濡れると透けるという特徴があります。主に古民家や和室の建具などに使われ、情緒的な雰囲気を出すことが可能です。

磨りガラス

磨りガラスの使うと、どこか懐かしさを感じさせるレトロな雰囲気を出すことができる。おじいちゃんやおばあちゃんの家で見たことがある方も多いはず。

網入板ガラス

網入板ガラスとは、その名の通り金網が入ったガラスを指します。通常、火災が発生するとガラスは割れてしまいますが、金網が入ることで破片が大きく飛び散ることが少なくなります。台風などの突風に対しても同様に、破片が飛び散るリスクを抑えることが可能です。ただし、金網が入ることで強度が上がっているわけではなく、防犯目的には使えないため注意が必要です。主に使われるのは飲食店・ガソリンスタンドなどの火を扱う店舗で、他には建築基準法や消防法で定められている防火地域・準防火地域では、建物や施設の内容を問わず網入板ガラスの導入が義務付けられています。

網入板ガラス

飛散防止の網によりガラスを割っても音が出にくく、ガラス破りをする空き巣にとっては逆に仕事がしやすくなることには注意したい。

複層ガラス

複層ガラスとは、2枚もしくは3枚のガラスを組み合わせ、ガラスとガラスの隙間を乾燥空気やガスで満たす、もしくは真空状態にすることで熱伝導率を低くした構造のガラスを指します。2枚のガラスを使った複層ガラスを『ペアガラス』と呼ぶこともありますが、正式には『ペアガラス』はAGC社の登録商標で、分かりやすいネーミングだったので浸透しました。同様に2枚のガラスを使った複層ガラスのことを、日本板硝子では『ペアマルチ』、セントラル硝子では『ペアレックス』としてブランド展開しています。さらに断熱性を高めるために3枚のガラスを使った複層ガラスもあり、AGC社は『トリプルガラス』、日本板硝子では『トリプルマルチ』、セントラル硝子では『ペアレックストリプルガード』としてブランド展開しています。複層ガラスは後述する機能的なガラスを組み合わせることで、さらに真価を発揮します。

複層ガラス

複層ガラスは高価で開閉が重くなるという弱点はあるが、その断熱性の高さは住まいを快適にし、家族の健康を健やかなものにしてくれる。その分光熱費や診療費を節約することにも繋がるので、可能ならば取り入れていきたい。

強化ガラス

強化ガラスとは、通常のフロートガラスに熱処理を加え急激に冷却したガラスで、通常のガラスに比べ、約3.5倍~4倍の耐風圧強度を持つガラスを指します。もう一つ大きな特徴があり、普通のガラスは割れると大小のナイフ状の破片となりますが、強化ガラスは割れると粉々に砕け散ります。他のガラスに比べ、割れても怪我をしにくいため、安全ガラスと呼ばれることもあります。その安全性から学校や、クレーンゲームなどの筐体に使用されています。ただし、粉々に砕け散る強化ガラスとしても、破片が目に入るなどすると危険なことには変わりません。また強化ガラスという名前から過度の強度を期待する方もいますが、実際には強度以上の衝撃を受けるとガラス全体が瞬間的に粉砕してしまうので、防犯目的には使えないことには注意が必要です。

強化ガラス

強化ガラスは深い傷が入ると粉々に割れてしまうので、切断できない。そのためガラスを強化するプロセスは、製品製造工程の一番最後に行われる。

合わせガラス

合わせガラスとは、複数の板ガラスの間に様々な性能を持たせた樹脂などの中間膜を挟んで接着したガラスのことを指します。中間膜の樹脂を変更することで、耐貫通性能、耐飛散性能、UVカット性能、遮音性能、着色などの機能を付加することが可能なので、住宅の防犯ガラス、自動車のフロントガラスや鉄道車両の全面・側面ガラス、情報機器のモニター用ガラスなどで使われています。

合わせガラス

車のフロントガラスは、事故時などで破砕したガラスで乗員が負傷・失明などの事態が発生しないよう、1987年から合わせガラスの使用が義務化されている。緊急脱出時には、車のフロントガラス以外をライフハンマーなどで叩かないと割れないため注意が必要だ。

Low-Eガラス

Low-Eガラスとは、ガラスの表面にLow-E膜といわれる特殊な金属膜をコーティングしたガラスのことを指します。Low-Eとは『Low Emissivity(ロー・エミシビティー)』の略で、低放射という意味です。太陽は常に近赤外線や遠赤外線などの光線を放出し、「放射(輻射)」という形で熱エネルギーを直接物体へ届けていますが、酸化スズや銀などの金属が使われているLow-E膜は、これらの光線を反射させます。また、Low-Eガラスは断熱性を高めるため複層ガラスの形で活用されており、Low-Eガラスを室外側に置いた遮熱タイプ(外からの光線を外へ反射)と、Low-Eガラスを室内側に置いた断熱タイプ(室内からの光線を室内へ反射)で性能が異なるため注意が必要です。

次世代のハイテクガラス『瞬間調光ガラス』
瞬間調光ガラスとは調光液晶フィルムを張り付けたガラス、もしくはガラスで挟み込んだもので、透明な見た目から様々な色のガラススクリーンへと瞬時に切り替える機能を持たせたガラスです。仕組みとしては、通常時(電気を流さない)は特殊な物質が不規則に並び、外からの光が吸収・拡散されることで不透明に見え、電気を流すと特殊な物質が規則正しく並び、外からの光が透過することで透明に見えるようになります。プライバシー性と開放感をスイッチひとつで切り替えられるため、最近では自動車のサンルーフや企業の会議室や入口などで利用されるようになってきました。

現状では、瞬間調光ガラス自体の価格が高いこと、電気工事士による工事が必要になり設置費用がかかること、ガラスとして機能していても調光機能が故障する可能性があることなどから、まだまだ住まいのガラスとしては普及していません。しかし、大量に生産され価格がこなれてきたり、技術革新で設置やメンテナンスがしやすくなれば、住まいのいたる所で瞬間調光ガラスが活用されるようになる時代が来るかもしれません。瞬間調光ガラスの今後に期待したいところです。

サッシは古くは木製やスチール製のものが主流でしたが、現在ではアルミ製、樹脂製のものが主流です。日本ではコストが安く、耐久性・保守性の優れたアルミサッシが普及しましたが、逆に欧米では景観上の配慮や熱損失対策として樹脂サッシの方が普及しました。現在では日本でも各サッシメーカーは樹脂サッシの開発に取り組んでおり、日本でも徐々に樹脂サッシの普及が進んでいる状況です。それぞれのサッシの素材による性能の違いについて見ていきましょう。

アルミサッシ

アルミサッシはその名称の通りアルミ製のサッシのことです。1959年に不二製作所(後の不二サッシ)が、ビル用初の既製サッシを発売後、さまざまな会社がアルミサッシ業界に参入し始めました。それまでは木製サッシとスチールサッシが主流でしたが、加工しやすくコストが安い・品質と価格が安定している・耐久性が高くメンテナンスが楽という点が顧客に受け、1960年代後半から一気に普及しました。
当時は住宅の気密性能や断熱性能が低く、アルミサッシのデメリットよりもメリットが目立つ状態でした。しかし、近年では住宅の高気密・高断熱化が進み、より省エネ性能の高い住宅が求められるようになったため、アルミ樹脂複合サッシや樹脂サッシに押され、アルミサッシの使用は減りつつあります。

アルミサッシ

かつては日本の住宅の窓でよく見かけたアルミサッシ。将来見かけることがなくなる日もあるかも!?

樹脂サッシ

樹脂サッシは塩化ビニル樹脂から成型されたサッシのことです。
1955年に西ドイツで開発されたもので、日本では1982年にYKK APが発売したのが始まりです。発売された当時は、北海道を中心にあくまで寒冷地向けの製品で、マイナー扱いされていました。しかし、1999年の「次世代省エネルギー基準」を皮切りに住まいに関する法整備が進み、欧米並みの効率的な省エネ性能の高い住宅が求められるようになり、寒冷地以外の住宅でも取り入れられるようになりました。
熱伝導率はアルミサッシに比べ約1000分の1と、非常に優れています。しかし、日本ではまだ樹脂サッシが普及していない現状では、導入するにあたりアルミサッシよりコストが高くついてしまいます。ただし、長い目で見れば光熱費が抑えられるため、ランニングコストを含めて導入を検討してみるとよいでしょう。

樹脂サッシのスペーサーの素材に注意!
近年では2枚のガラスをつけたペアガラスや、さらに断熱性を高くするために3枚のガラスをつけたトリプルガラスのサッシが見られるようになりました。通常、それらのガラスが接触して割れないように、スペーサーが挟み込まれます。

ここで注意する必要があるのですが、既製品の樹脂サッシの中には、標準装備のスペーサーが樹脂、もしくはアルミの場合があります。「樹脂サッシなんだから、部品は全て樹脂でしょ」と思い込んでいると、冬の寒い日になってアルミスペーサーが触れているガラスの部分にのみ結露が発生していることに気付く羽目に・・・なんてことになりかねません。

せっかく高い樹脂サッシを選ぶ場合は、後で後悔しないように標準装備されているスペーサーの素材にもしっかり注意するようにしましょう。

樹脂サッシ

現在では、米国や欧州をはじめ、中国や韓国、日本では北海道でも「樹脂サッシ」が主流となっています。サッシメーカーも樹脂サッシの生産ラインを強化しており、今後標準的なサッシになる日も近い!?

アルミ樹脂複合サッシ

アルミ樹脂複合サッシは、室内側を樹脂、室外側をアルミという複合構造をしているサッシのことです。
室外側が耐候性に優れたアルミにし、室内側を断熱性に優れた樹脂にすることで、アルミサッシと樹脂サッシのそれぞれの良い部分を引き出しています。ただし、アルミサッシより価格が高く、樹脂サッシほど断熱性能に優れているわけではないので、あくまでバランスに優れたサッシと考えましょう。

木製サッシ

木製サッシは、文字通り木でできたサッシのことです。
日本では1950年代くらいまでは木製サッシが主流でしたが、安価で加工しやすいアルミサッシが主流となっていきました。しかし、日本家屋に合う意匠性やデザイン性は他のサッシでは真似できないもので、木ならではの温かみと上質な雰囲気をもたらします。また、木自体の断熱性が高く、結露が発生しにくいなどの特性も合わせ持ちます。
デメリットとしては高価なことと定期的なメンテナンスが必要なことです。木は腐食しやすい素材のため、3~5年ごとの再塗装をしないと劣化が進み、雨水と紫外線で木の部分の反りや変色、最悪の場合腐って雨水が浸入するケースがあります。そのため、取り扱いについては他のサッシに比べ慎重に行う必要があります。

木製サッシ

アルミ・スチールサッシが主流になる前は木製サッシが主流だった。高価ではあるが、その質感の良さと断熱性の高さにより、現在でもなおファンが多い。メンテナンスをし、大切に扱っていきたい。

さらに見やすいようにサッシを素材別に性能比較表としてまとめてみました。熱伝導率の値は低ければ低いほど、熱が伝わりにくいことを示しています。コストは需要と供給により変動が激しいので、あくまで目安としてご覧ください。また、サッシは住宅に使用されているパーツの中でも、寿命が長い部材です。メンテナンス頻度や設置場所により寿命は変化し、サッシに使われているパッキンや戸車は10年ほどで寿命が来るので、交換していく必要があります。

サッシの素材 熱伝導率【W/(m・K)】 コスト 耐用年数
アルミ 236 20~30年
樹脂 0.13~0.29 30~50年
0.12~0.19 20~30年

◎ 優れている / ◯ 普通 / △ 劣っている

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