注文住宅の木材となるまで
【木の育成や加工、木材の種類を解説】

住まいに使われている木材

日本人は昔から木を利用して、様々な物を作り、生活してきました。現代では鉄やコンクリート、プラスチック、セラミックなど様々な素材があるにもかかわらず、いまだに木はかかせない建築材のひとつとなっています。それは木というものに下記のような特性があるからと考えられます。

他の建築構造材と比較しても軽く、建物自体が軽くなることで地震で受ける力を抑えられる素材であること
同じ重量なら鉄の約4倍の引張強度・コンクリートの約6倍の圧縮強度がある、曲がりにも強い素材であること
③木造建築である法隆寺(西暦607年に創建)などが示す通り、耐久性のある素材であること
空気を含む構造のため熱を伝えにくく、断熱性が高い素材であること
周囲の湿度が高い時には湿気を吸収し、周囲の湿度が低い時には水分を放出する機能が備わっている素材であること
燃えると炭化層を生成し酸素の供給を妨げられることで、燃え尽きたり強度が下がるまで時間がかかる素材であること
天然素材で香りがあり、触れると適度に柔らかく、温もりがあるなど人体に優しい素材であること

このように木は"強さと優しさ"を兼ね備えた素材であり、人の肌が触れるような箇所には特に優れた性能を発揮します。だからこそ、木材にもこだわりたいという方は多いはず。しかし、建築用の木材を調べてみると、たくさんの種類がありすぎて、どれを選べばいいか分からなくなってしまうこともしばしば・・・。

それで今回は木材についてまとめてみました。木材は価格だけではなく、木目や質感などのデザイン性、感触や香りなどの快適性も異なってきます。全ての木材を把握するのは大変ですが、少しでも木材について知識をつけておけば、住まいを建てる時、最適な床材・造作材選びに時間をかけるのも短くて済みますし、愛着を持てるようになるはずです。今から家造りに備えて、住宅の設備や間取りだけではなく、木材についても勉強しておきましょう。

日本人にとって身近な素材である木材ですが、山が身近にない現代人にとっては、その原料である木がどのようにして育てられているのか知らない場合が多いです。木は時間をかけ、柱や板にできる太さまで育てられることで、ようやく建材として使えるようになります。それは時間にして、50~60年程度の年月が必要です。なんと日本人の平均寿命の半分以上にもなってしまうのです。木材とはそれだけ大変な時間と手間がかかっている貴重なものなのです。

苗木づくり

苗畑に種をまいて、2~4年ほど苗木になるまで育てます。

苗木づくり

杉の苗畑の写真。スギ・ヒノキ・アカマツなどの植林で使われる苗は、林業種苗法で生産・流通に制限がされているため、登録済みの生産事業者しか作ることができません。

地拵え(じごしらえ)

山に植林する前に、苗木が育つよう雑草や雑木を取り除きます。

地拵え(じごしらえ)

植樹する前の伐採跡地には、伐倒木や枝条などの林地残材が散らばっているため、安全に植林を行えるように土地を整理する必要があります。

植林

生存競争でまっすぐ上に向かって伸びるように、苗木をある程度密集させて植えます。

植林

白い筒のようなものはハイトシェルターと呼ばれ、シカ・ウサギ・ネズミ類からの食害を防止したり、風・紫外線・誤伐・寒さから苗木を保護する役割を持っています。

下刈り

毎年(植林してから5~10年の間)の夏に苗木の成長を邪魔する周囲の雑草や雑木を除去します。

つる切り

苗木にからみついたクズなどのつる植物を取り除きます。

つる切り

どんなに大木にも絡みつく「つる植物」。つる植物には草本性(そうほんせい)つる植物と木本性(もくほんせい)つる植物があり、木本性つる植物は放っておくと太り続け、幹に食い込み痕を残すほど。

除伐(じょばつ)

植えた木の周囲で自然に生えた木や、競争に負けた育つ見込みのない木を切ります。

枝打ち

日当たりを良くし木の成長を促したり、節の少ない優良な木材にするため、枝を付け根から切ります。

枝打ち

一定の高さまでの枝を付け根から除去することで、節目ができにくくなります。枝打ちをしない場合、枝が死んだ状態で幹に巻き込まれる「死節」が出来るというリスクが生じます。これにより、腐朽菌が広がって死んだ枝が巻き込まれてできる「腐れ節」や、死節の部分がすっぽりと抜け落ちて穴が開く「抜け節」などのリスクも高まります。

間伐(かんばつ)

植林して15~20年たつと木と木が混み合ってくるので、日光がよく当たるよう弱った木や枯れた木を間引きます。さらに間引き、残された木の成長を促すと共に、間伐した健康な木は間伐材として出荷する場合もあります。

間伐(かんばつ)

間伐された木を運んでいるところ。間伐をすることで林内に適度に光が射し込み、下草などの下層植生が繁茂することで、山の土壌の品質を良好に維持することができます。

主伐(しゅばつ)

一定の林齢になると、収穫目的で伐採します。

主伐(しゅばつ)

主伐の時期は、樹木の成長期で水分がたっぷりと含まれる夏季よりも、休眠期に入り水分の吸収が少なくなる冬季が望ましい。

立派な木になり、ようやく収穫できたとしても、このままでは木材として使用することはできません。切断し扱いやすい大きさにしたり、乾燥させることで頑丈にしたり、変形や収縮、腐敗を防ぐなどの加工が必要になります。
現在では様々な機械が導入され、必要な労力や時間は短縮され、乾燥の時間も短縮できるようになりました。しかし、天然乾燥させる場合は半年から1年くらい、断面が大きい場合は2~3年も必要になることがあります。

玉切り

伐採した木は木材の規格にしたがい切りそろえられ、その場で同じ長さの丸太になります。

玉切り

切り分けた丸太のことを「玉」と呼ぶため、「玉切り」と呼ばれます。適度な長さにすることで、材として無駄が出にくいだけでなく、運搬作業にも無駄が生じにくくなります。

搬出・運搬

ケーブルなどで林道まで集められた丸太をトラックで運び出し、原木市場や貯木場、もしくは直接製材工場まで運ばれます。

搬出・運搬

山の地形や傾斜、林道までの距離、運び出す木の重さや特性を踏まえ、林道までの搬出方法は決められます。今では様々な機械により搬出・運搬は効率化されていますが、人力で行われていた時代もありました。

原木選別

品質を揃えるため、直径(太さ)・材長(長さ)・質(曲がりや割れ)ごとに選別し、製材用途別に分けられます。

原木選別

材の長さや直径区分ごとの山に積み上げられる。

皮むき

皮から出る灰汁からの変色、虫食いやカビの繁殖を防ぐため、皮を剥きます。

皮むき

機械で一気に皮むきされた大量の丸太。皮むきをすると外部から保護してくれるものがなくなるので、この工程は加工の直前に行われます。

木取り(きどり)

いかに無駄なく製品(角材)を取れるか、鋸を入れる位置と順序を決めていきます。

製材作業(大割り・挽き割り・板割り)

鋸を入れていき、木材を目的の大きさに向けて、大きめにカットしていきます。

乾燥処理

製材した木材を乾燥させます。天然乾燥、もしくは人工乾燥により、含水率(割木材に含まれる水分量)を乾燥材の基準となる20%になるまで落としていきます。乾燥を施した後に出てくる木材のクセ(割れや曲がり)は、修正挽きを行い形を整えます。

乾燥処理

木材は桟積み(風の通るよう、間隔を空けて桟木を置いた上に木材を並べ、何段にも重ねること)され、乾燥処理が施されていきます。

検品・仕上げ

強度測定・含水率測定などの性能チェックが行われ、ラッピングされます。

検品・仕上げ

必要に応じてプレナー仕上げ、抜け節埋め木加工、実(さね)加工などにより表面が整えられます。

無垢材

無垢材とは、伐採した木を切り出し、1本の木から切り出して作った天然木材のことを指します。
メリットとしては、他の素材を貼ったり塗ったりする加工がされていないので、木材特有の温かみのある風合い・肌触りを楽しむことができます。また、接着剤などの科学物質は使われていないため、化学物質に敏感な体質の方も安心して使用することができます。
デメリットとしては、無垢材は大量生産できず、集成材に比べコストがかかる場合が多いです。これは無垢材に必要な原木自体、ある程度の太さに育つまで時間が必要で、その分人の手がかかってしまうこと、さらには1本の原木から採れる無垢材の量が限られること、乾燥させるのに手間や燃料代などが必要なことが原因として挙げられます。また、自然の素材であるため強度が一定ではないことや反り・変形が出ることもあり、扱うには木材を見極める職人の技術力が必要です。

無垢材

完全な天然素材のため取り扱いが難しい無垢材だが、色や木目の形に木の個性があり、素材そのものの素朴な質感と温かみを味わうことができる。

集成材

集成材とは、一定の大きさに揃えた木材同士を接着剤で圧着し、組み合わせて作った成型木材のことを指します。
メリットとしては、集積材は大量生産できるので、無垢材に比べてコストがかからない場合が多いです。また、JAS規格に適合した集成材ならば、一定以上の品質が保証されており、職人の技術力の差は出にくいです。
デメリットとしては、接着剤で圧着している仕様上、化学物質によるシックハウス症候群の可能性が出てくることです。ただし、建築基準法が2003年に改正され、シックハウス症候群の主な原因の一つであるホルムアルデヒドの発散量に応じて、建材に等級が付けられるようになりました。現在では等級のないものは使用禁止となっているため、集成材の安全性は以前より上がっています。また、注意点として、集成材自体はまだ歴史が浅く、数十年・数百年での実績データがないので、圧着している接着剤の耐久性などまだ分からない部分があることには留意する必要があります。

集成材

貼り合わせには種類があり、同じ長さの無垢材を張り合わせた「横はぎ」、モザイク状に貼りあわされた「バットジョイント」、写真のように両手の指を組み合わせたような「フィンガージョイント」があります。

構造材

構造材とは、「母屋」「垂木」「梁・桁」「根太」「筋交い」「柱」「土台」などの住宅の骨組み部分に使われる木材を指します。構造材は構造物の骨組みとして、屋根や床の荷重や地震の揺れにも負けない強度が求められ、湿気への強さ・耐久性の高さも求められます。そのため構造材は、それらの条件を満たすヒノキやスギ、ベイマツやベイツガなどの木材が選ばれます。さらに土台はシロアリの食害が受けづらいヒノキやヒバなどの木材が選ばれます。また、木の部位としては腐りにくく強度の高い、心持ち材(赤みを帯びた木の中心部分を心材【赤身】、外側の周辺部を辺材【白太】といい、この心材部分を含む材のこと)が構造材として使われます。

構造材

構造上不可欠な材で、壁や天井などで隠れてしまう場合が多い。ただし、化粧梁のようにあえて見せることで、部屋のデザインのアクセントとして演出する場合もある。

造作材

造作材とは、「天井」「棚」「階段」、和室の「鴨居」「敷居」「長押」「框」、洋室の「ドア枠」「沓擦り」「ケーシング」「笠木」などの住宅の仕上げや取り付けに使われる木材を指します。(※本来の言葉の意味ですと、床材も造作材の一部ですが、造作材で使われる木材とはまた別の性能が求められるため、「床材」の項目に分けております。)造作材は人の目に触れる箇所に設置されるため、室内空間をよりきれいに演出する見栄えが求められます。そのため造作材は、それらの条件を満たすマツやスギなどの木材が選ばれます。前述の構造材とは逆に、節が少なく樹心を含まない部分である心去り材が造作材として使われます。これは心去り材の方が柾目(直線的な木目)が出やすく、見た目が美しいからです。ただし、芯去り材は樹心を外して加工される仕様上、加工前の木が大木(老木)でないと芯去り材へ加工しづらいため、芯持ち材に比べ高価です。

造作材

和室には様々な造作材が見られる。近年では使途や費用に応じて単一造作材、集成造作材、化粧シート貼り造作材など様々な造作材が使用される。

床材

床材とは、住まいの床に使用する造作材のことで、フローリングやタイルなどがこれに当たります。床は人や家具と接して荷重を支え、常に見える箇所となるため、頑丈さと見た目の美しさ、足あたりの良さが求められます。現在、無垢フローリングとして、パイン(松)、スギ(杉)、ヒノキ(桧)、オーク(ナラ)、チーク、アカシア、バーチ(カバ)、クリ(栗)、ウォールナット、ブラックチェリー、ハードメープル(カエデ)など様々の木材のものがあり、色味などのデザインで選ばれることも多いです。

床材

特に子供がいる家庭の場合、足音による騒音や転倒によるケガ、不注意やイタズラによる汚れなとが考えられるので、床材は慎重に選んでいきたい。

英語だとソフトウッドと呼ばれ、柔らかい木質をしています。日本名である針葉樹という名前も、葉っぱが針のように先がとがった細い葉を持つ樹木という意から来ています。まっすぐに伸びて背が高い樹木で、軽くて柔く加工しやすいという特徴があります。これは組織の構造として、大半を仮道管が占めており、乾燥させることで空気を含む隙間ができているからです。40~60年で木材として使用できるほどに成長し、特に日本ではスギ・ヒノキを植林・伐採しているので、広葉樹よりも価格が抑えられています。長材の入手しやすさや加工のしやすさから、柱や梁といった建築の構造材に多用されています。

パイン(松)
パイン(松)

白っぽい黄色の色合いが特徴で、油分が多いので経年変化で、艶のある色合いに変わっていきます。比較的安価な木材となっており、キズつきやすいが硬いという特徴があるため。家の重さを支える梁(はり)や桁(けた)といった横架材に利用されることが多いです。世界でも様々な種類の松がありますが、特に国産の松は『地松(じまつ)』と呼ばれ、さらに『黒松』『赤松』に分類されます。しかし、近年の日本では、海外産のマツの台頭やマツクイムシの被害の増加、マツ類特有のねじれや曲がり・松脂(まつやに)が現在の建築業界で敬遠されている等の理由により、製材の生産量は減っています。
なお、パインというと果物のパイナップルを思い浮かべる方もいるかもしれませんが、パイナップルは『松ぼっくり』に似ていてリンゴのようなあまい香りがすることから、英語の『松』の意である『パイン』と、『りんご』の意である『アップル』を組み合わせて名前がつけられています。

スギ(杉)
スギ(杉)

辺材は白色から淡い黄色、心材は濃い桃色から赤褐色~黒色と、辺材と心材の境目がはっきりしています。スギの語源は、まっすぐの木の意である「直木(すぐき)」、もしくは上へ上へ進む木という意の「進木(すすぎ)」から来ているといわれており、ほぼ円形の樹幹が地面から真っ直ぐに長く伸びます。また、杉は成長が早く、戦後各地で大量の植林が行われたため、比較的安価で手に入ります。強度こそヒノキに劣りますが、柔らかい樹種で加工がしやすいため、昔から構造材、建具、天井板として利用されてきました。
なお、植林されたスギは40~60年の間に伐採されて木材となりますが、実は杉の寿命は約1000年と考えられており、屋久島の屋久杉の中には樹齢3000年以上と推定されるものもあります。樹齢約1000年と言い伝えられている京都市左京区の大悲山国有林にある「花脊(はなせ)の三本杉」のうちの1本は、樹木としては日本一の高さ(62.3m)を誇ります。

ヒノキ(桧)
ヒノキ(桧)

心材は淡紅色で、辺材はほとんど白色となっており、美しい年輪を持ちます。また、木材として高い強度や耐久性を持ち、建材、内装材、風呂桶、彫刻、櫛、木槌、道具の柄などの小物にも利用され、神社仏閣を建てる木材としても用いられています。建立から1300年以上も経過している法隆寺も、実はヒノキで作られています。しかし、他の国産針葉樹の木材に比べ価格が高く、住宅の構造全体にヒノキを使うと大変なコストがかかってしまうため、柱や土台にだけ使うなど上手に用いる必要があります。
ヒノキの名前の由来としては、古代に火起こしに使っていたという意の「火の木」からという説や、尊く最高のものを示す意の「日の木」からという説などがあります。どちらの説にしても、昔から大事に扱われてきた由緒正しい木材として、現在も日本人に愛されています。

ヒバ
ヒバ

色味としては、辺材は黄色を帯びた白色、心材は淡い黄色~淡い黄褐色で、辺心材の境目はやや不明瞭となっています。ヒバは香りが強く、ヒノキチオールという天然成分を多く含み、シロアリや細菌を寄せ付けにくいという特徴があります。他にも、腐りにくく、耐水性があって湿気にも強い、強度もヒノキと同じくらいあるため、土台や柱、軒廻り、浴室、濡縁、ベランダなどに利用されています。岩手県の中尊寺金色堂(西暦1124年建立)に使われている木材は青森ヒバが使われており、ヒバ産地の周辺ではヒノキの良材がない場合には、ヒバがよく用いられてきました。特に東北地方の文化財はヒバで建てられているものが多く見られます。現在では、ヒバと性質が似ているベイヒバ(イエローシーダー)が輸入されるようになり、ヒバの代替材として利用されることも多くなっています。
なお、ヒノキチオールという成分は、その名前から日本のヒノキに含まれると思われがちですが、ヒノキにはほとんど含まれていません。このヒノキチオールの名前は、タイワンヒノキから発見されたことに由来しており、その後ヒバにも他樹種に比べ比較的多量に含まれていることが明らかになりました。現在では抗菌剤や防腐剤など、医薬品から化粧品まで幅広く利用されています。

英語だとハードウッドと呼ばれ、硬い木質をしています。日本名である広葉樹という名前も、葉っぱが手のひらを広げたような形の丸みをおびた葉を持つ樹木という意から来ています。広く伸びて太くて背が低い樹木で、重くて硬くキズが付きにくいという特徴があります。これは組織の構造として、大半を導管・柔細胞・木繊維で構成されていますが、密度の高い木繊維が多いからです。一人前の木になるまで150~200年もかかり、主に海外から輸入しているので、針葉樹よりも価格が高いことがほとんどです。キズのつきにくさから、床といった建築の内装材や家具に多用されています。

オーク(楢)
オーク(楢)

ナラとオークは厳密には異なる木ですが、一般的には日本や中国、ロシアで採れるものをナラ、北米で採れるものをオークと呼びます。ナラは寒冷地域で育ち、特に北海道のミズナラは高級材として利用されています。目がつまっていて固く強度や耐久性に優れているうえ、虎斑(とらふ)と呼ばれる虎の斑紋を連想させる木目が美しいため、フローリングや家具に適しています。チロースという物質が導管を塞ぐため耐水性に優れており、害虫にも強いという特徴があるため、ワイン樽やウィスキー樽にも利用されています。
古代ヨーロッパでは、オークの実であるドングリは豚の飼料や人の食料となり、木材は家具材、船材や酒樽として幅広く利用されていました。その歴史は古く、何千年も前の牧畜の跡や紀元前の歴史書、各地の神話にも登場するほどです。また、オークはヨーロッパの木々の中でひと際大きく、立派になるので、「森の王」と呼ばれるくらい信仰されています。現在では、ドイツやイギリスなど10を超えるヨーロッパの国々で、国樹認定されています。

バーチ(樺)
バーチ(樺)

主に寒冷地で育つカバノキ科の樹木で、芯材は赤褐色で、辺材は黄白色のような色をしています。木目や木質が桜と似ているため、桜の代用品として使われたことがきっかけで、カバザクラとも呼ばれています。しかし、桜はバラ科の樹木で、また別の植物になります。
材質は硬くて重く、均等で緻密な木肌を持ち、乾燥が不十分だと反りや割れなどの狂いが生じやすい材質です。耐久性もあまりなく、虫の害を受けやすいので家具材、建築内装材、フローリング、敷居、ドアなどの建具材に使用されることが多いです。

チェストナット(栗)
チェストナット(栗)

色味は褐色を帯びた灰白色ですが、経年で徐々に濃くなっていきます。非常に硬く耐久性があり、タンニンを含んでいて水や虫に対して強いのが特徴です。昔から日本では家の土台や大黒柱など、強度が必要な箇所の材料として使われ、現在鉄道ではコンクリート製の枕木が使われていますが、栗の木製の枕木が使われていたこともあるほどです。そのため、切削などの加工はやや難しく、乾燥も難しい部類となっています。
栗の木特有の使い方として名栗丸太(なぐりまるた)というものがあり、六角の丸棒状にした栗材の表面を「突き鑿」や「ちょうな」、「与岐」などで削り痕を残す日本古来の技術で加工したもので、木目が美しい波のように出てきます。加工の種類として波形、竹節形、突撃(つきのみ)があり、はっきりとした木目が面の凹凸によって模様となり、壁止め、床緑(とこぶち)、柵(さく)、欄干(らんかん)などに使われ、特に京都で多く用いられてきました。職人の数は減りましたが、現在でも京都の祇園風情緒や格式高さを醸し出すため、和風建築の住まいや店鋪で使われることがあります。

ケヤキ
ケヤキ

ケヤキは、「ケヤキ並木」という言葉がある通り、神社、公園、住宅地、町の街路樹など、北海道を除く全国に分布している、身近な広葉樹のひとつです。材が堅く、耐久性・耐朽性が優れている木材で、色は黄褐色又は赤みのある黄褐色で、ハッキリした力強い木目が特徴的です。大径になったケヤキはこぶができやすく、そのこぶのおかげで繊維の配列が不規則になるため様々な「杢(もく)」が現れやすいといわれています。そのため、日本の広葉樹のなかでも良材として知られ、古くから建築材、家具材、建具材、造作材として、寺社建築や城建築に重用されたり、農家の大黒柱としても利用されたりしました。
なお、古代の日本では強い木を意味する槻(つき)あるいは槻木(つきのき)と呼ばれていました。しかし、16世紀頃から「けやけき木」(際立って目立っている、際立って優れている、格別な木という意味)→「ケヤキ」と呼ばれるようになりました。京都東山の清水寺の舞台にも使われており、ケヤキの柱を78本使うことで舞台を支え続けています。

ブラックチェリー
ブラックチェリー

主に北米東部の比較的暖かい地域に生息するバラ科サクラ属の広葉樹であるブラックチェリーは、日本のヤマザクラと同じ樹種で、日本のサクランボより黒みの強い赤黒い実を付けます。辺材は少し桃色がかった乳白色で、心材は桃色がかった淡褐色をしており、辺材、辺材の境界はハッキリしています。曲げ強さ、圧縮強さ、耐衝撃性、耐朽性は中くらいで、扱いやすい木材といえます。床板、楽器、銃板などに使用されるほか、ハムの燻製の材料としても使用されます。
経年変化の度合いの深さが大きな特徴のひとつで、ツヤと色が深まり、飴色になっていきます。変化の早さとしては、半年から1年もすると変化がわかるぐらい色が濃くなります。また、もうひとつの特徴としてガムポケット(樹脂痕による黒い斑点や筋状の模様)が入りやすいというものがあります。ガムポケットが避けられていた時代もありますが、現在ではブラックチェリーのやさしい表情に個性を加えるものとして、魅力のひとつになっています。

ウォールナット
ウォールナット

くるみ科の植物で、世界三大銘木のひとつに数えられています。ウォールナットは様々な種類がありますが、現在ウォールナットというと、北米を原産とするブラックウォールナットを指す場合が多いです。独特なグラデーションの中に青紫から赤紫にグレーが加わる奥行感のある風合いが魅力な木肌をしています。含有のカテキンやタンニンが紫外線と反応し酸化することで、明るい色に変化します。また、適度の油分も含んでいるのでツヤもあり、使い込むことで味のある風合いになっていきます。他にも、耐衝撃性に強い・木肌が美しい・狂いが少ない・加工性や接着性に優れているという特徴もあるため、高級家具や工芸品・楽器に使われることも多いです。
ウォールナット材を使用した家具は、1670年から1720年にイギリスで人気を博し、調度品やアンティーク家具として作られるなど、富の象徴として扱われてきました。そのため、この頃のヨーロッパの家具市場では、ウォールナット材による製品が人気を独占し、「ウォールナットの時代」と呼ばれました。日本でも1970年から1980年にかけてウォールナットの人気が高まり、「家具材のロールスロイス」の異名を持つまでになりました。

チーク
チーク

チークとは、南アジアから東南アジア地域に分布するクマツヅラ科の落葉性高木の総称で、世界三大銘木のひとつに数えられています。現在、天然のチークはインド・ミャンマー・タイ・ラオスにしかなく、ほとんどの地域で伐採が禁止されたため流通量が減り、高価で入手が難しい木材となっています。チークは木製のタール油分が多く含まれていることから、木材の表面にはワックス状の成分がにじみ出ます。そのため、他の木材のように塗装を施さなくても、耐久性・耐水性・耐腐食性に優れた木材として有名です。辺材は淡黄褐色、心材は暗金褐色となっており、年月とともに色が濃くなるという経年変化を楽しむことができます。
チークが世界中に知れ渡ったのは、ヨーロッパ各国が19世紀から20世紀初頭にかけて、植民地を拡大していったことがきっかけでした。長い航海には、海水がかかっても腐りにくく、シロアリや腐朽菌にも強い、木造帆船を作るための木材が必要でしたが、イギリスの木材会社がチークの耐水性と耐久性に着目し、造船材として使用されるようになり、銘木として世界的にその価値が認められるようになりました。高級列車として知られるオリエント急行や 20世紀を代表する豪華客船クイーンエリザベス2号の内装なども、このチーク材が用いられています。

マホガニー
マホガニー

世界三大銘木のひとつで、美しい艶と縞模様の木目が特徴です。現在ではワシントン条約で天然木の伐採や取引が制限されており、希少かつ入手困難な高級木材となっています。「マホガニー」は中米ホンジュラスの現地語で「黄金色」と言う意味で、カリブで初めて発見されたことから「カリブの宝」とも呼ばれてきました。日本表記だと【桃花心木】と書き、独特の赤みを帯びた色と風合いは、他の材には無いマホガニーならではの魅力で、軽量で加工しやすい一方、とても頑丈です。そのため、繊細な家具作りに重宝され、古くは宮殿の装飾などにも使われました。
マホガニーは様々な種類がありますが、本来マホガニーというと、キューバンマホガニーを指します。ホンジュラスマホガニー(ビック・リーフ・マホガニー、パシフィック・コースト・マホガニー)よりも更に優れた樹種だともいわれていましたが、あまりの人気で大量伐採されてしまいました。1946年にキューバ政府がマホガニー材の輸出を禁止したことで、キューバンマホガニーはほぼ入手不可能に、またワシントン条約により取引が制限されてしまったことで、ホンジュラスマホガニーも希少な材となっています。現在では同じセンダン科で品質も優れているアフリカンマホガニーが広く流通しています。

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