注文住宅のトイレ
【トイレの種類と製品】

トイレ

人間は生きていく上で栄養を得るため、「食事」が必要です。しかし、栄養を吸収した後は体に有害、不必要な老廃物が体内に残り病気になってしまうため、トイレで「排泄」することが必要になります。つまり、トイレは人間が健康を維持する上で重要な役割を持つ設備なのです。
また、トイレには感染症を防ぐという公衆衛生の側面もあります。トイレがないような上下水道が整備されていない地域では、コレラの流行が起こり得ます。コレラはコレラ菌が腸に感染することで毒素を出し、深刻な下痢や嘔吐により脱水症状を引き起こす病気なのですが、井戸水などがコレラ菌を含む排水で汚染され、それを別の人間が体内に取り込むことで感染が拡がってしてしまうからです。日本でも江戸から明治時代にかけて何度か大流行し、1858年には江戸だけで26万人もの人々が亡くなったといわれています。
昔は「臭い」「汚い」イメージがあったトイレも、近年では上下水道設備が整ったことや、洋式トイレやウォシュレットが普及したことにより、そのイメージも大分薄れてきました。それだけではなく、現在では節水性能や掃除のしやすさなどのメンテナンス性能、省スペースなどにも目が向けられ、快適なトイレタイムを過ごせるよう設計されています。どのようなトイレがあるか把握し、自分の理想のトイレを見つけてみましょう。

人がトイレで過ごす時間
人は1日あたり約14分(大は6分・小は8分)をトイレで過ごすといわれています。たった14分と思うかもしれませんが、年間にすると5,110分(約85.2時間)。仮に日本人の平均寿命を85歳と考えると、一生で434,350分≒7,239時間≒301日≒10ヶ月にも上ります。トイレで本や新聞読んだり、スマホをいじる習慣のある方はさらに時間が増えるはずです。

「排泄」は「睡眠」「食事」と並ぶ生理的欲求の一つです。生きていくためには必ず行い、毎日必ずそのための時間が発生します。そのため「トイレ」の環境を整えることは生活の質を上げることにつながりますので、以下の点に気をつけてトイレを快適な空間として維持していきましょう。

【 清潔に保つ 】
トイレは使っていく内に尿ハネや埃が溜まっていき汚れていくので、定期的な清掃を行い清潔に保つように心がけましょう。便座のフチや裏は尿ハネによる黄ばみ汚れができやすく、臭いの元になるので注意が必要です。特に男性の場合、立って小を行うと便座のフチや裏だけでなく、尿が壁や床・便座など広範囲に飛び散ってしまうことでトイレがかなり汚れてしまうため、座って用を足すようにするなど汚れないように使うことが大切です。また、トイレは意外とホコリが溜まりやすい場所です。ホコリの成分の大半は繊維くずで、紙であるトイレットペーパーから出たり、下着を脱ぐ動作で衣類がこすれることで発生するため、トイレ用のクイックルワイパーなどで定期的にホコリを除去しましょう。

【 湿気をこもらないようにする 】
水回りであるトイレは湿気のこもりやすいためカビや細菌が繁殖しやすい場所です。新しい住まいの場合は24時間換気システムが導入されているはずなので、湿気がこもりにくいようになっていますが、トイレの窓やタンクなどに結露が発生しているような状況の場合、カビや細菌の温床となるため注意が必要です。トイレの窓や壁を断熱性の高いものにするなど、トイレ内の設備に温度差ができないようにし、結露を防ぐとよいでしょう。

【 物を少なくする 】
トイレの大きさは通常のお部屋に比べ狭く作られるのが一般的で、だいたい0.4坪・0.5坪・0.75坪・1.0坪の大きさになることが多いです。広さ的に収納力には限界があるため、最低限必要なもの(予備のトイレットペーパーや生理用品、掃除用具など)に絞ることで、スッキリとした空間にすることができます。また、必要以上のモノがなくなると埃が溜まりづらく掃除が楽になり、トイレを清潔に保ちやすくなります。

【 照明にこだわる 】
トイレはリラックスできる場所なので、リラックスを誘う暖色系がよいとされています。明るさは40~60ワット(LED電球で換算すると485~810ルーメン)くらいを目安に選ぶとよいでしょう。

現在、住宅で一般的に採用されているトイレは洋式トイレというもので、椅子のように座って使うタイプのトイレになります。以前の日本では和式トイレという便器をまたぎ、しゃがんで使うタイプのトイレが一般的でしたが、和式トイレを住宅に採用されることはほぼありません。そのため現在では公衆トイレや学校のトイレのような公共施設くらいでしか和式トイレを見かけなくなりました。一方で洋式トイレは細分化が進み、下記のようなトイレが出ています。

「便器」と「(温水洗浄)便座」を自由に組み合わせることができる「組み合わせトイレ」
「便器」と「(温水洗浄)便座」で機能やデザインが一体になっている「一体型トイレ」
便器の後ろの「貯水タンク」を無くした「タンクレストイレ」
「貯水タンク」や「トイレグッズ」を納めるキャビネットがセットになった「キャビネット付きトイレ」
壁に掛けられ、床から浮いている「壁掛けトイレ」

ただし、これらは明確に分類分けされているわけではなく、「組み合わせトイレ」もしくは「一体型トイレ」をベースに複数の機能が組み合わせられたものになります。まずは代表的なトイレメーカーが販売している製品を大まかに把握しておいた上で、組み合わせor一体型にするか? タンクありorなしにするか? キャビネットありorなしにするか? 壁掛けor床置きにするか? など、それぞれのメリット・デメリットを踏まえた上で候補を絞り込んでいくとよいでしょう。なお、このページでは現在需要があまりにも少ない和式トイレの製品紹介については取り扱わないものとします。

組み合わせトイレ

トイレは大きく分けて「貯水タンク」「便器」「便座」という3つのパーツから成り立っています。「組み合わせトイレ」はこれら3つのパーツが別々に組み合わさったもので、好きなメーカーの便座や便器を別々に選択することができます。現在最も普及しており価格も安いのが特徴で、故障時には必要な箇所のみの交換で済むため、メンテナンスにかかる費用も抑えることが可能です。
デメリットとしては、各パーツの組み合わせで凸凹や継ぎ目・隙間ができるため、一体型に比べ清掃が多少面倒になります。ただし、昔に比べ工夫が凝らされている現在のトイレは掃除もしやすくなっています。

組み合わせトイレ

組み合わせトイレと一体型トイレの見分けのつけ方は簡単で、タンクと便座の境目が分かれているかを見ると一目瞭然です。組み合わせトイレの場合、タンクと便座が別々に分かれているため溝ができる。

一体型トイレ

一体型トイレは「貯水タンク」「便器」「便座」が全て一体になっているトイレで、見た目がとてもスマートなのが特徴です。「貯水タンク」「便器」「便座」が全て同じメーカー製で設計思想が同一のものなので凸凹や継ぎ目も少なく、掃除しやすくなっています。
デメリットとしては経年劣化や破損で故障が発生した場合、その部分だけを交換するわけにはいかず、「貯水タンク」「便器」「便座」を丸ごと交換することになり、修繕費が高くなりがちです。ただし、近年ではメーカーによって取替用の機能部を用意している場合や、便座のみの交換に対応した一体型トイレを販売している場合もあります。一体型トイレの導入を検討しているのなら、事前にメーカーへ壊れた場合(特に経年劣化が考えられる温水洗浄便座部分)の修繕方法について確認しておいた方がよいでしょう。

一体型トイレ

一体型トイレの場合、タンクと便座が一体となっているため溝ができない。丸っこくて可愛らしいデザインが多いのが特徴だ。

タンクレストイレ

タンクレストイレは「便器」「便座」のみで構成されており、給水管から直接水を使うトイレです。貯水タンクがなくなり一回りコンパクトになるため、トイレスペース自体を広く使うことができます。また、高さがなくなることで圧迫感が抑えられ、トイレスペースをスッキリと見せることや、表面積が減ることで表面に付着するホコリの量の減少、掃除しずらいデッドスペースの減少も見込めます。他にも従来の貯水タンクを利用した洗浄に比べ、少ない水量で洗浄を行える工夫がなされているので節水効果も高くなっています。
デメリットとしては、コストがかかることが挙げられます。タンクレストイレは電気を利用して電磁弁を開閉することで水を流す仕組みになっていることや、便器と便座が一体型となっているため、スタンダードなトイレに比べ導入コストや修繕費用が高くなるケースがほとんどです。また、電子制御ということで停電時には緊急用の操作で水を流す必要があることや、構造上手洗いタンクは設置できないため、手洗いをトイレ内で済ませたい場合は別途手洗い器やカウンター手洗いを設置する必要があります。

タンクレストイレ

タンクレストイレは電気制御で給水管の水圧を利用して洗浄を行う、給水管自体の水圧が足りなければ、詰まりの原因となるため、導入する時は事前にメーカーへ確認しておくといいだろう。

キャビネット付きトイレ

キャビネット付きトイレは収納棚がついているトイレで、「便器」「便座」と収納棚に隠された「貯水タンク」で構成されています。タンクや給水管が隠されているためトイレスペースがスッキリと見え、タンクや給水管のホコリが溜まらないため掃除もしやすくなっています。もちろんキャビネット自体も活用でき、トイレットペーパーや掃除用具を片付けることができます。
デメリットとしてはキャビネット付きトイレを導入するためには、キャビネットを設置できるだけの十分なスペースが必要になることです。

キャビネット付きトイレ

キャビネット付きトイレのキャビネットにはI型(奥一列のタイプ)とL型(奥一列からサイドまであるタイプ)がある。トイレの広さと必要な収納力を踏まえて選ぶとよいだろう。

壁掛けトイレ

壁掛けトイレは壁に掛けられたトイレのことで、宙に浮いているように見えるので、フロートトイレともいわれています。公衆トイレなどで採用されていましたが、近年になって一般家庭にも普及し始めました。その独特のデザインからトイレに高級感を演出することができ、接地面がないため便座の下まで掃除がしやすいのがポイントです。
デメリットとしては価格が高いことが挙げられます。壁と壁を支える床で本体の重量と人の体重を支えるため、荷重に負けないように十分に壁と床面を補強する必要があり、その分費用がかかるからです。また、現在販売されている製品の耐荷重は、しっかりと壁補強を行った上で200kg前後となっていますが、使用する方の体重や扱い方によっては導入を見合わせた方がよいでしょう。

壁掛けトイレ

宙に浮いているように見える壁掛けトイレ。一見不思議に見えるがその仕組みは、キャビネット内にある金属フレームを壁と床に固定し、その金属フレームで便器を固定するようになっている。給水管や排水管、電源コードもライニングやキャビネットの中に隠されるため、見ることができない。

最新のトイレの水量と機能性
皆さんは昔の水洗トイレで使っていた水の量をご存しでしょうか?

TOTOによると1975年以前の水洗トイレの場合、大1回で流す水の量は20Lにも達していたといわれています。なお、一般的なお風呂の水の量は140~200L程度なので、7~10回ほど流したら簡単にお風呂分の水を捨ててしまっていたことになるわけです。

現在の最新の節水トイレの場合、大1回で流す水の量は3.8Lなので、それと比較すると1/5で済んでいる計算になり、かなりの量の違いがあることが分かります。そのため、まだまだトイレが使えるから……と思って昔の水洗トイレを使い続けてしまうと、経済的にも環境的にもよろしくないので注意が必要です。

なお、水量は技術的に限界に達しており、現在トイレメーカー各社は洗浄量を減らす開発から快適性やメンテナンス性、施工性を上げる開発へと切り替えています。この先水量については大きく変わることはないはずなので、水道代やトイレ自体の機能性が上がっていることを考えると、昔のトイレを使い続けている方は乗り換えを検討した方がよいでしょう。

大1回で流す水の量
1975年以前 20L
1976年 13L
1994年 10L
1999年 8L
2006年 6L
2009年 4.8L
2012年 3.8L

日本の温水洗浄便座の歴史
日本に来た外国人観光客の驚くもののひとつにトイレの温水洗浄便座があります。2015年頃の中国人観光客による爆買いブームの頃には、高級炊飯器、保温ボトルと共に温水洗浄便座も多く買われていったといわれています。「ウォシュレット」と呼ばれ、我々日本人に親しまれている設備ですが、実は海外の方にとっては珍しいお品物なんです。(なお「ウォシュレット」という名称は、正式にはTOTO製の温水洗浄便座の商品名のことを指し、現在では普通名称化しています。)日本人だけではなく外国人も認める「ウォシュレット」は、どのようにして生まれたのでしょうか?

そもそも「ウォシュレット」は、アメリカの企業であるアメリカン・ビデ社が医療用に製造していた「ウォッシュエアシート」が起源といわれています。1960年代に東洋陶器(現在のTOTO)が輸入・販売していましたが、輸入品はアメリカ人の体格に合わせて設計されたもので、当時の日本人の体格には合っていませんでした。そこでTOTOは輸入元のアメリカン・ビデ社から製造ライセンスを取得・国産化をすすめ、1969年には洗浄・乾燥機能と暖房便座機能をつけた「ウォッシュエアシート」を発売しました。しかし、当時の製品は価格が高く、お湯の温度が不安定で火傷を負うものが出るなど、まだまだ作り込みが粗いものでした。

その後も研究開発を進め、1980年に「ウォシュレット」が誕生します。「ウォシュレット」は「ウォッシュエアシート」に寄せられていたクレームを踏まえ、社員が実験台となって様々な問題点を1つ1つ確認し、集められたデータを元に作られました。例えば、社員男女300人以上のデータから、大人の肛門の位置の平均値を割り出し、ノズルから放出されるシャワー角度を43度にしたり、樹脂コーティングで濡れてもICを動作させる技術を持つ小糸製作所の協力を得て温水の温度を制御させることに成功しています。しかし、こうして苦労の末販売にこぎ着けた「ウォシュレット」ですが、初期ロットには「突然水が出るようになって、お湯が出なくなる」という不具合がありました。温度をキープするために頻繁にON・OFFが切り替わることにより、温水タンクに使用していた細い電熱線が金属疲労で切れてしまっていたのです。そのため、一時期は会社の廊下に返品されたウォシュレットの山ができていたという逸話もあります。その後は購入者1件1件の家を回り、罵声も浴びせられながらも、不具合が出た「ウォシュレット」を全て交換し終えたそうです。

このように失敗と成功を繰り返しながら「ウォシュレット」は進化し、現在に至ります。2020年3月の内閣府調べによると、温水洗浄便座の一般世帯普及率は80.2%となっており、調査が始まった1992年には普及率が14.2%だったということから、性能の進化に伴い凄い勢いで普及したのが分かります。現代の日本人の生活に欠かせない設備となった温水洗浄便座がどんな進化を遂げていくのか?これからも目が離せません。

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