2024/7/23 公開
「できるだけ生活スペースを増やしたい」「開放感のあるおしゃれな空間をつくりたい」と考えている方から注目されているのがスキップフロアです。段差を利用して縦方向に空間を有効活用するスキップフロアは、狭小地や変形地でも広々とした住環境を実現できる間取りの一つです。
本記事では、スキップフロアの基本的な特徴やメリット、デメリットとその対策方法、実際にスキップフロアを取り入れた住宅の事例などをご紹介します。快適かつ、他にはない個性的な住まいづくりをしたいという方は、ぜひ参考にしてください。
スキップフロアとは、一つの階層に段差をつくり、別のフロアを設ける間取りのことです。
スキップフロアには明確な定義がなく、1階と2階の間にスペースをつくって中2階に設置したり、反対に一段下げて半地下のようなスペースにしたりと、さまざまなスタイルがあります。半階ずらすことで、より空間を効率的に使え、開けた視界を確保できるため、限られた敷地面積の中でゆとりのある住環境を整えたい方に人気です。
さらに、スキップフロアを取り入れることで、立体的でデザイン性の高い生活空間にできますマンションや建売住宅にはない、注文住宅ならではの楽しみといえます。
注文住宅を建てる方に人気のスキップフロアには、さまざまなメリットがあります。ここではスキップフロアが人気を集める理由として、6つのメリットをご紹介します。
スキップフロアの最大のメリットは、空間を有効活用できることです。
例えば、趣味スペースや書斎、リモートワークスペースなど、個室ほどの面積を必要としない用途としてのスペースを確保できます。フロアの階層をずらすことで、通常の間取りよりも床面積を広く使えるだけでなく、限られたスペースを最大限に生かすことが可能です。
また、スキップフロアでは仕切りを使わずに生活空間を縦に分けられ、壁や間仕切りによる圧迫感がなく、開放的な生活空間を演出してくれます。
スキップフロアを取り入れることで、居住スペースを増やしながら開放感もプラスできます。限られた敷地面積の中でゆとりのある広々とした生活空間をつくりたい場合におすすめです。
スキップフロアは家全体を明るく、風通しの良い空間にしてくれるという点も大きなメリットです。
スキップフロアは壁や扉ではなく、段差を利用して空間を仕切れることから、家全体に光が行き渡りやすいのが特徴です。自然光が行き渡ることで、開放的で明るい居住空間を実現できます。
自然光を取り入れるには吹き抜けという選択肢もありますが、吹き抜けをつくると2階部分の床面積を削る必要があり、居住スペースが減ってしまいます。その点スキップフロアであれば、十分な居住スペースを確保しながら、光の行き渡る空間デザインが可能です。
また、壁や扉が少ないことで室内の風通しも良くなる点も、スキップフロアを取り入れる魅力の一つです。
段差を利用して収納スペースを増やせるというのも、スキップフロアを取り入れる大きなメリットです。
住宅を建てる際は、土地の容積率に収まる規模の建物しか建てられないという決まりがあります。容積率というのは、敷地面積に対する建物の延床面積の割合のことです。例えば敷地面積100平方メートル・容積率200%の土地であれば、延床面積200平方メートルまでの建物を建てられるということになります。
ところが、高さが1.4メートル以下の空間であれば、延床面積に含まれず、容積率にも加算されません。つまり、容積率に左右されずに生活スペースや収納スペースを増やせるということです。
スキップフロアの段差の部分を上手に活用すれば、季節物をしまっておく収納スペースや、お子さまの遊び場、趣味のスペースなど、多様な使い方が可能です。
スキップフロアは、おしゃれな生活空間をつくりたいという方にもおすすめです。段差を生かして空間をデザインすることで、室内に立体感が生まれ、他にはない個性的な家を建てられます。
スキップフロアの階段をスケルトン階段にしたり、段差部分をちょっとした書斎にしたりと、インテリアを楽しみながら独特な空間にできるでしょう。
空間が緩やかにつながっていることで、家族とのコミュニケーションを取りやすい点もスキップフロアのメリットです。
例えば、小さな子どもがいる家庭では視線が遮られないため、家事をしながらでも子どもの様子を見守ることが可能です。高齢の家族がいる家庭でも、生活の様子が見えるというのは大きな安心感につながります。
スキップフロアを取り入れれば、リモートワークや趣味に没頭しつつも、常に家族の様子が分かるため、自然と会話が生まれコミュニケーションも増えるでしょう。
スキップフロアは、限られた敷地面積を有効活用できるという特徴から、狭小住宅と特に相性が良い点もメリットとして挙げられます。
通常の住宅設計では、横向きに間取りを考えるため、空間を仕切るために壁や扉を使うことで閉塞感が出やすくなるのが難点です。一方、スキップフロアの場合は空間を縦に使って生活空間を広げられ、開放感を損なわずに空間を仕切ったり、居住スペースを増やしたりすることが可能です。
また、狭小住宅で課題になりやすい収納スペースも、スキップフロアを取り入れて段差を活用することで解決できます。
狭小住宅を建てるに当たって、生活面積や収納面積に困っている方にもおすすめです。
おしゃれで効率的な空間デザインが可能なスキップフロアですが、取り入れるに当たって知っておきたいデメリットもあります。ここではスキップフロアが持つ5つのデメリットと、取り入れる際の対策方法について解説します。
スキップフロアは、通常の2階建てや3階建てに比べて階層構造が複雑になるため、建築基準法に注意しながら設計する必要があります。設計や施工に多くの経験と専門知識が求められることから、難易度は高めです。
単に室内に段差をつくればよいというわけではなく、生活のしやすさや使いやすさを確保しながら設計する必要があるため、施工を依頼する工務店やハウスメーカーの知識・力量が問われます。
またスキップフロアは、容積率に影響を与える可能性があり、事前に自治体の建築基準や規制を確認しておく必要があります。スキップフロアを取り入れることで課税対象面積が増えないか、固定資産税が増加しないかなど、建築以外の部分も考慮しながら進めることが重要です。
スキップフロアを検討する際には、デザイン性の高い住宅を建てられるだけでなく、構造や法律・規制についての知識や経験も豊富な、ハウスメーカーや工務店に依頼しましょう。
スキップフロアのある家は壁や扉がない分、空気が階層間を抜けやすく、空調の効率が悪くなる傾向にあります。夏場は暑く、冬場は肌寒く感じるケースが多く、さらに冷暖房の効きが悪いため、光熱費が高くなるということは押さえておく必要があります。
空調効率を高めるためには、高気密高断熱の家を建てるという方法があります。高気密高断熱の家は、一度温めた(もしくは冷やした)空気が家の外に逃げにくくするのと同時に、外気温が室内に伝わるのも防ぐことが可能です。
シーリングファンやサーキュレーターを利用して、空気を循環させるのもおすすめの方法です。暖かい空気を下に、冷たい空気を上に循環させることで、室温を快適な状態に保てます。
さらに設備を追加するのであれば、全館空調や床暖房を取り入れるというのも選択肢の一つです。特に全館空調は、部屋だけでなく廊下などを含めた家全体を温めるため、温度差が引き起こすヒートショック対策にもなります。
スキップフロアを取り入れると室内に段差が増えるため、バリアフリーに適していないというデメリットがあります。将来的に、家の中を移動するのが負担になることが想定されるため、老後も見据えた家づくりをする場合や、高齢者と同居する場合には注意が必要です。
対策としては、リビングなど頻繁に使うスペースにはスキップフロアを設けないことが有効です。書斎や趣味のスペースであれば、日常的な移動の負担を抑えながらスキップフロアを取り入れられます。また、段差を小さくし、緩やかにすることで、上り下りの負担を減らすことも可能です。
また、スキップフロアを小上がりとして設置すれば、ちょっとした腰掛として使え、足腰に不安のある高齢者でも快適に暮らせる可能性が高まります。
上下移動の利便性を高める方法としては、ホームエレベーターを設置するという選択肢もあります。しかしスペースとコストが必要になるため、予算と広さに余裕がある場合に限られます。スキップフロア部分の移動を楽にするには、手すりを設置するのもおすすめです。
スキップフロアは段差が増えることから、ロボット掃除機を利用できません。そのため、掃除機を使って段差や階段を掃除しなければならない上、特に低いフロアにホコリがたまりやすく、小まめな掃除が必要という点は押さえておきましょう。
少しでも掃除の負担を減らすには、軽量でコードレスの掃除機を使用することです。また、フロアごとにお掃除ワイパーやモップなどの掃除道具を置いておけば、掃除の手間を分散させられます。
スキップフロアを導入すると、建築費用が一般的な2階建てよりも高くなる傾向があります。
その理由は、フロアをつなぐための階段が増えたり、耐震性能を高めるために、通常の木造建築に使わない構造材や耐力壁を用いるケースがあるためです。
建築費用を抑えるための対策としては、まず費用対効果を検討することから始める必要があります。スキップフロアのメリットと建築費用を天秤にかけ、自分にとって本当に必要かどうかをよく考えましょう。
また、ハウスメーカーや工務店の担当者に相談しながら決めることも大切です。スキップフロアの施工実績が豊富な会社であれば、予算を抑えつつデザイン性の高いスキップフロアを提案してもらえる可能性があります。
さらに、耐震性能の確保も忘れてはいけません。スキップフロアを採用した住宅は、フロアに対して間仕切り壁が少なくなるため、構造計算が難しくなります。デザイン性を重視しながらも、安全な家づくりができる工務店に依頼することを意識しましょう。
これから注文住宅を建てる方の中には、どのような基準でスキップフロアを取り入れるか悩まれている方もいるかもしれません。スキップフロアはどのような住宅でも取り入れやすい間取りですが、特に大きく分けて2つのタイプの土地に向いています。
スキップフロアを有効活用できる土地の特徴の一つ目は、防火地域または準防火地域に指定されている土地です。多く見られるエリアとしては、駅前や幹線道路沿いといった、建物が密集している場所が挙げられます。
これらの地域では、火災リスクを避けるために、新しく建てる建築物に対して厳しい制限が設けられています。建物の高さや階数、構造にも一定の条件があり、自由に間取りを決められないケースも少なくありません。
また、地域によっては日当たりや風通しを確保することを目的として、建物の高さが制約されている場合もあります。これを「斜線制限」と呼び、建物の上部に傾斜を設けなくてはならないため、結果的に室内空間が狭くなるということです。斜線制限が設けられた場所では、スキップフロアを取り入れることで、ゆとりのある空間活用が可能になります。
建物の高さ・階数・構造に対して制限のある地域でも、スキップフロアを導入することで、開放的な空間を実現できます。
スキップフロアは、狭い土地でも空間を有効活用できることから、狭小地や変形地に住宅を建てる場合におすすめです。
限られた敷地面積で十分な生活面積を確保したくても、高さや容積率の制限によって、思ったように面積を増やせないケースは少なくありません。その点スキップフロアであれば、条件を満たせば延床面積に含まれないため、狭い敷地面積でも広々とした居住空間を確保できます。
また、スキップフロアは斜面に家を建てる場合も有効です。土地を平らにするための工事が不要になり、建築費用を抑えられる可能性もあります。
スキップフロアの魅力についてお伝えしたところで、ここからは実際にスキップフロアを取り入れた住宅の事例をご紹介します。スキップフロアは家族構成やライフスタイルによってさまざまなパターンがありますので、ぜひ参考にご覧ください。
こちらの住宅では、一番日の当たる南面が隣家となっており、採光をしっかりと確保したいという理由でスキップフロアを取り入れました。特徴的なのは天井の高さで1階の天井高は3.5メートル、2階部分も入れると約5メートルの吹き抜けとなっており、開放感は抜群です。
スキップフロアには子ども部屋を配置し、程よくプライバシーを確保しつつ、勉強に集中できる空間づくりを意識しています。スキップフロアの階段部分は、完全に壁で覆わずに小窓を設置しました。閉塞感を軽減しながら、おしゃれな空間を演出しています。
決して敷地面積は広くはないものの、建物上部にも小窓を複数設置することで、自然光をたっぷりと取り込める、明るく開放的な住まいとなりました。
こちらからさらに詳しく間取りの魅力をご覧になれます。
ワンフロアに収めることの多いキッチンダイニングとリビングの間に、スキップフロアを取り入れることで、空間にメリハリをつくったのがこちらの住宅です。
リビングをスキップフロアにし、その下を収納にすることで、ゆったりとした居住スペースとゆとりのある収納を両立しました。収納スペースはかがんで歩ける程度の高さにし、布団などの大きなものも収納できるようになっています。
さらに建物中心部は吹き抜けになっており、採光と風通しの良さの両方を味わえるというのも大きなポイントです。
開放感のある家族団らんのスペースが欲しい、でも収納力も譲れないという方には、スキップフロアを検討してみてください。
お客さまインタビューでさらに詳しく間取りの魅力をご覧になれます。
空間を有効活用でき、デザイン性のある住まいをつくれるスキップフロアは、限られた敷地面積の中でのびのびとした生活を送りたい方におすすめです。
しかし、通常の2階建てよりもコストがかかるだけでなく、使い勝手やデザイン性、耐震性能など、あらゆる側面を考慮しながらプランを練る必要があるため、どの工務店・ハウスメーカーに依頼するかを慎重に検討する必要があります。
タイセーハウジングではお客さまの理想の暮らしや、お持ちの土地の条件などから、お客さまにぴったりな住まいをご提案させていただいております。
スキップフロアについてのご相談も承っていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。