通り庭のある家とは?
メリット・デメリットや活用できる間取り例を解説

2025/1/13 公開

通り庭のある家とは?メリット・デメリットや活用できる間取り例を解説

注文住宅はすでに建築済みの建売住宅とは違い、注文者の依頼に沿って設計できる自由度の高さが魅力です。ただし土地の形状によっては、思うように機能性とデザイン性の双方に優れた住宅を建てるのが難しいケースもあるでしょう。

今回紹介するのは、昔ながらの知恵で開放感や機能性に優れた住宅を建築するのに役立つ通り庭です。注文住宅の間取りに悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

通り庭とは

通り庭とは、建物内の表から裏口まで続く土間のことで、もともとは日本の伝統様式として京都の長屋建物で多く見られていました。

京都の長屋建物は、ウナギの寝床とも称されるように細長い住宅が多かったため、通り庭を設けることで通路の役割を果たしていました。また、途中のスペースに流しやかまどを設け、効率の良い家事動線となるように工夫されている点が特徴です。

建物内にあるにもかかわらず庭の文字が使われているのは、かつて古民家の土間のことを「ニワ」と読んでいたからで、京都以外で通り庭を採用している地域では通り土間という呼び名の方が一般的です。

また地域によっては店庭や走り庭といった呼び方をすることもあります。現代では通り庭を作る際に使われる材料はコンクリートやモルタル、タイル、石など多岐にわたり、機能性だけでなくデザイン性の面からも注目を集めています。

昔から通り庭が間口の狭い長屋建物に採用されてきたのは、通り庭を作ることで複数のメリットを享受できるからです。ここからは、通り庭のメリットを確認していきましょう。

空気が循環する

通り庭を設けると家の中が広い空間でつながるため、風が吹き抜けやすくなるのはメリットの一つです。注文住宅の間取りでは生活スペースを広くするために、通路を設けず各部屋を扉で行き来する設計もあります。しかし、部屋を全て扉や壁で仕切ると、どうしても空気の流れが淀みやすく、換気効率が悪くなってしまうのが難点です。

通り庭を作れば風が吹き抜けるスペースができて換気効率が良くなり、室内空間を快適に保ちやすくなります。結果的に、家族の健康や住宅の寿命延長に良い効果を期待できるでしょう。

開放的な空間になる

通り庭を採用すると、開放的な印象を与えられる点もメリットです。玄関が狭い住宅は圧迫感がありますが、通り庭を採用することで玄関から大きな空間が生まれて開放感が出るため、住宅全体のイメージも広々とした印象を与えやすくなるでしょう。より開放感を高めたい場合は、天井部分に吹き抜けを作ったり、あえて梁を見せたりするデザインと一緒に採用するのがおすすめです。

間仕切りなしで室内空間を仕切れる

住宅設計において、プライバシーを守るためや用途を分けるために、部屋ごとに間仕切りを設けることが必要です。しかし間仕切りが多いと、空間が区切られて狭く感じることがあります。間仕切りの代わりに通り庭を作って各部屋へアクセスできるようにすれば、開放感を保ったまま別々の空間を生み出すことが可能です。

また一般的に平屋では廊下を設けない間取りが採用されることが多いですが、二世帯で空間を部分的に共有する場合、あえて廊下を設けてスペースを分けることがあります。廊下部分を通り庭にすれば、通路としての用途だけでなく、生活空間を仕切る役割もしてくれます。

土足で歩ける

通り庭の特徴には、玄関から土足で入れる土間という点も挙げられます。一般的な日本の住宅は、玄関で靴を脱いでから室内に上がりますが、土間の部分では靴を履いたまま移動しても問題ありません。例えば荷物が多くて両手がふさがっているときや、重い荷物をキッチンまたはリビングなどへ持ち運ぶときに役立つでしょう。通り庭を採用することで、家事効率の向上も期待できます。

多目的なスペースとして利用できる

通り庭は、アイデア次第でさまざまな用途に活用できるのがメリットです。玄関付近に洗面台や収納を設置すれば、帰宅時の手洗い場やペットの足洗い場として使用したり、ウォークスルークローゼットとして活用したりすることが可能です。

また土足で入れる土間ならではの利点を生かし、アウトドア用品や自転車・バイク用品などの置場としても役立ちます。汚れを気にして室内で行いにくいような、バイクなどのメンテナンスを行う場所として利用することも可能です。

通り庭のデメリット

通り庭には、玄関から続く大きなスペースを有効利用することで得られるメリットが複数ありますが、デメリットも存在します。完成してから「こんなはずじゃなかった」と後悔しないように、デメリットもしっかりチェックしておきましょう。

居住スペースが制限される

住宅に通り庭を設ける場合、必然的に各部屋の居住スペースは減ってしまいます。いくら換気効率や開放感に優れていても、居住スペースが狭く利便性が悪い住宅では満足度が高くならない可能性があるので注意してください。通り庭を設置した住宅で快適に過ごすには、ある程度の敷地の広さが必要です。狭い敷地にはあまり向いていないことを覚えておきましょう。

配置によっては生活しづらくなる可能性がある

通り庭の特徴として「空間を仕切る」点が挙げられます。二世帯住宅などで生活空間を分けたいケースではメリットとなりますが、デメリットになるケースもあるので注意しましょう。例えば、家族間のコミュニケーションを密にしたい場合です。通り庭を作ると部屋同士の距離ができ、子どもや配偶者などと接する機会が減ってしまい、家族間のコミュニケーションが取りにくくなる恐れがあります。

また通り庭は土足で歩けるのがメリットである一方、各部屋を出入りする際はその度に靴を履いたり脱いだりしなくてはなりません。そのため、通り庭に接する部屋の用途や利用目的がはっきりしていないと、利便性が悪くなる可能性があります。通り庭を採用するときは、あらかじめ各部屋の用途を明確にした上で間取りを決めることが大切です。

冬の時期は寒くなりやすい

通り庭は風が吹き抜けやすいので換気効率が良く、また土間であるため、床が地面に近く夏は涼しくなりやすいという特徴があります。一方で、冬は広いオープンスペースが生じることで暖房効率が悪くなる上、地面からの冷気の影響を受けやすく、底冷えしやすいのがデメリットです。特に寒冷地などで通り庭を採用するときは、しっかり断熱材を入れたり、床暖房を設置したりするなど、冬場の寒さ対策をしておくことをおすすめします。

汚れやすい

通り庭は土足で歩けるため、住宅の外と中を気軽に行き来しやすいメリットがあります。一方、靴を履いたまま歩くことによって、どうしても床が汚れやすいのがデメリットです。特に雨の日など天候が悪い日ほど汚れやすく、掃除を小まめに行う必要があります。通り庭を設ける際は掃除しやすい素材を用いるなど、実際の生活をイメージしつつデザインすることが大切です。

通り庭はメリットだけでなくデメリットもありますが、アイデア次第でデザイン性と機能性の双方に優れた住宅を作れるのが魅力です。通り庭に興味を持った方の中には、実際にどうやって活用するのかを知りたいと思う方も多いでしょう。ここからは、実際に通り庭を採用した住宅の間取りを紹介していきます。

玄関・キッチン・勝手口をつなぐ通り庭

玄関から裏口まで続く通り庭は、よく見られる間取りの一つです。玄関とキッチンをつなぐことで買ってきた食料品を冷蔵庫にしまったり、すぐに調理しやすくなったりして家事動線がよくなります。また玄関から勝手口まで見通せるため視覚的に広く見えやすく、開放感を得られやすいのも特徴です。

玄関と庭をつなぐ通り庭

庭でガーデニングやバーベキューなどを楽しむ機会の多い家庭は、玄関と庭をつなぐ通り庭を設置すると便利です。戸建て住宅の場合、庭へ出るときはリビングなどの室内から出入りするのが一般的ですが、通り庭を設置して玄関と庭をつなぐことで、靴を履いたまま気軽に出入りできます。特に開放的かつ機能性の高い住宅を求めている方におすすめの間取りです。

玄関と車庫をつなぐ通り庭

通り庭によって玄関と車庫をつなぐことで、デザイン性と機能性を兼ね備えた空間になります。外に出ることなく車庫への行き来ができるため、雨の日など悪天候時でもぬれずに移動できます。また車庫や通り庭の空いたスペースに自転車やベビーカー、アウトドア用品をそのまま収納することも可能です。

玄関とリビング・ダイニングが一体化した空間となる通り庭

より機能性が高く、広い空間で生活したい方におすすめなのが、玄関とリビング・ダイニングが一体化した通り庭です。玄関から入ると、すぐに生活空間が広がります。通り庭を通路としてではなく、部屋の一部として扱うことで、より広々とした開放的な間取りを実現できます。

二世帯住宅の居住空間の境界スペースとなる通り庭

通り庭を通路や部屋の一部としてではなく、仕切りとして活用することも可能です。二世帯住宅の中には、生活空間をしっかり分けるために壁で仕切る住宅もありますが、二世帯間のコミュニケーションが取りにくくなってしまうかもしれません。仕切りの代わりに通り庭を配置すれば、居住空間をある程度分けながら視覚的な空間のつながりを維持できます。

通り庭を作った建築実例

ここからは、住宅設計に通り庭を生かすことを検討したい方に向けて、通り庭を設けた建築実例を2つ紹介します。

建築実例1:ワンルームのような通り庭

通り庭を作った建築実例

1つ目の実例は玄関とリビングを通り庭でつなぎ、まるでワンルームのように仕上げた住宅です。リビングに上がる部分に軽い段差を設けることで、玄関から靴でそのまま入るのに違和感がないように設計されています。

また玄関から入って正面の壁には外の景色を眺められる窓が設置されており、通り庭による視界の抜けとの相乗効果で開放感が増しているのも特徴です。窓の高さを効果的に設けることで光をうまく室内に取り込んでおり、明るく広い室内空間を演出しています。

通り庭を作った建築実例

建築実例:通り庭のある家

建築実例2:玄関に広い収納スペースを設けた通り庭

通り庭を作った建築実例

2つ目に紹介するのは、玄関部分に通り庭として広い土間を設けた住宅です。玄関から入った部分に4畳ほどの土間を設け、そこにクロスバイクやベビーカーなどを置けるように工夫されています。

また土間からは直接シューズインクローゼットに入ることもでき、靴の収納も簡単です。通り庭の上部を吹き抜けにしたことで光を取り込みやすくした他、2階のリビングからでも家族の帰ってきた気配を感じられるように配慮されています

通り庭を作った建築実例

通り庭は、機能的な住宅を建てるために役立つ昔ながらの工夫の一つです。近年では、さまざまなデザインや建材が採用されるようになっており、効率的な動線を確保しつつおしゃれな住宅を作るのに役立ちます。

タイセーハウジングでは平成21年の創業以来、1,000棟以上の住宅の施工に携わってまいりました。お住まいになった後もストレスなく家族が幸せに過ごせる家づくりを目指しています。タイセーハウジングは土地探しから資金計画、設計・施工、アフターメンテナンスまで一貫したワンストップサービスを提供しています。

土地選びから始まり、引き渡しが終わった後もお客さまを迷わせない、困らせない、徹底したサポート体制を敷いています。「現場主義」を貫いていますので、常に現地へ赴き、お客さまのご希望に合った土地の情報をお伝えしていますので、ぜひお気軽にご相談お待ちしております。