小上がり和室の必要性
収納にも便利なおしゃれな作り方とは

2025/1/11 公開

小上がり和室の必要性 収納にも便利なおしゃれな作り方とは

近年リラックスできる空間として、若い世代にも和室の魅力が見直されています。中でも人気を集めているのが小上がり和室です。畳の香りや床座で過ごす日本の伝統的な生活様式を楽しみつつ、生活の中でのメリハリを感じられるのが小上がり和室の魅力といえます。

本記事では、これから家作りを考えている方に向けて、小上がり和室のメリット・デメリットを詳しく解説し、設置にかかる施工費用の相場や、実際の建築実例を紹介します。希望の住まいを実現するために、ぜひ参考にしてください。

小上がり和室とは

小上がり和室は、床の高さを部分的に一段上げた畳のある空間です。リビングの一部に設けられることが多く、空間に奥行きと広がりを演出する効果があります。近年は全室フローリングの住宅が一般的ですが、和の素材を取り入れることで落ち着いた雰囲気が加わるため、新築やリフォームで採用するケースが増えています。

一般的な和室や畳コーナーとの違いは、フラットな床に機能性とデザイン性を兼ね備えた空間が加わることです。小上がり和室の段差部分は、収納や腰掛けとして活用でき、空間を有効活用できる点が魅力といえます。

小上がり和室のメリット

小上がり和室は、室内に落ち着いた雰囲気をもたらすだけでなく、さまざまな活用方法のある実用的な空間です。小上がり和室を設置することで、暮らしにどのようなメリットが生まれるのかを押さえていきましょう。

立体感のある空間になる

小上がり和室を取り入れることで空間にメリハリが生まれ、立体的でおしゃれな雰囲気を作り出せます。フローリングのリビングの一角に小上がり和室を設けると、視覚的に区切りができるため、リビングに奥行きが生まれてより広々とした印象を演出します。

また畳敷きの小上がり和室は、フローリングとは異なる温かみや落ち着きを感じさせる空間です。室内のイメージチェンジをしたいときに効果的で、スタイリッシュな仕上がりが期待できます。

収納が増える

収納が増える

小上がり和室の段差部分は収納スペースとして活用でき、すっきりとした空間を作り出すのに役立ちます。限られた面積を有効活用できるため、「居室を広めにすると収納が不足する」といった際に、特におすすめの選択肢といえるでしょう。

収納方法には、引き出し型、天面開口型、跳ね上げ型の3種類があり、用途に応じて使い分けられます。大きな物は天面開口型や跳ね上げ型、頻繁に使う物は引き出し型に収納すると、出し入れに便利です。また段差の高さや幅を調整することで、収納する物に合わせた最適なスペースを作れます。

多目的な用途で利用できる

小上がり和室は、さまざまな用途に活用できる多機能な空間です。来客時には応接間として利用できる他、床が柔らかい畳なので子どもの遊び場にも適しています。段差によって空間が仕切られるため、テレワークを行うワークスペースや、落ち着いて読書を楽しむスペースとして活用することも可能です。

小上がり和室の用途は、生活のシーンに応じて柔軟に変えられます。特定の目的で部屋を作る必要がないため、他の部屋の面積を広くでき、限られた床面積の有効活用にもつながります。

段差に座ってソファ代わりにくつろげる

小上がり和室の段差は、腰掛けてくつろぐのに最適です。座面が畳で柔らかく、長時間座ってもお尻が痛くなりにくい一方で、ソファのように体が沈み込むことがないため、スムーズに立ち上がれます。膝や腰に不調を抱えがちな高齢者にとっては、ちょうど良い椅子代わりになるでしょう。

小上がり和室で過ごすときは、リビングの床に座っているのと比べて目線が高い位置でキープされます。寝転がった姿勢でテレビを観る際に、快適さを実感するはずです。また小上がり和室で仕事をしているときは、リビングで過ごす家族と目線の高さが合わせやすいので、コミュニケーションがとりやすいというメリットがあります。

床のホコリ・ゴミが入りにくい

清潔さを保ちやすいことも小上がり和室のメリットです。一般的な和室の場合、リビングなど隣接する部屋からホコリやゴミが入りやすく、汚れが目に付くことがあります。その点、小上がり和室は一段高いところに位置するため、ホコリやゴミが入りにくく、清潔な空間を保てます。赤ちゃんのおむつを替えたり洗濯物を畳んだりと、できるだけ清潔な場所を選びたいときに小上がり和室があると便利です。

不快感なく寝転がれる

小上がり和室は床材が柔らかい畳なので、疲れたときやリラックスしたいときに固いフローリングよりも快適に寝転がれます。先述の通り、ホコリやゴミが上がりにくいので、お昼寝にも適したスペースといえるでしょう。天然素材の畳には調湿作用があり、汗ばむ夏もサラリとした肌触りが楽しめます。

小上がり和室のデメリット

メリットの多い小上がり和室ですが、家族構成やライフスタイルによっては不便に感じることがあるかもしれません。ここでは、小上がり和室を作ることで想定されるデメリットを紹介します。

バリアフリーにはならない

高齢者が過ごしやすいバリアフリー設計では、徹底して段差をなくすことが求められます。年齢を重ねるごとに足腰の筋力が低下し、わずかな段差でもつまずきの原因になるためです。

小上がり和室は腰掛けやすい高さに設定することが多く、高齢者が上り下りする際は足腰に負担がかかります。また室内の平坦なスペースが少なくなり、車椅子でのスムーズな移動が難しくなる可能性もあります。特に家族に高齢者がいる場合、小上がり和室を設置するかどうかを慎重に検討することが大切です。

圧迫感を覚える可能性がある

リビングの広さや天井の高さによっては、小上がり和室を設けたがために窮屈さを感じるかもしれません。特にリビングに大型家具を配置する場合は、空間が狭く感じられる可能性があります。

デザイン次第では奥行き感を出せることが小上がり和室の魅力の一つですが、家具を置いたときに狭さを感じないかを意識することが大切です。リビング全体のバランスをイメージしながら、開放感を演出するように工夫しましょう。

小さい子どもがいる場合、落下の危険がある

小さな子どもがいる家庭では、小上がり和室からの転落事故に注意する必要があります。特に、歩き始めたばかりの赤ちゃんは好奇心が旺盛です。目を離した隙に小上がりから転落して、大きなけがにつながるかもしれません。また自分で上り下りができる年齢の子どもでも、遊びに夢中になって転がり落ちる可能性があります。

小上がり和室の転落事故から子どもを守るには、段差を慎重に検討する必要がある他、小さいうちは常に目を離さず見守っておく必要があるでしょう。

家具の配置が制限される

小上がり和室は設置場所が固定されるため、それに合わせて家具を配置することになります。大型家具やテーブルの配置に制約が生じ、レイアウトの自由度が下がることに注意しましょう。特に、テレビの向きは固定されやすいため、リビングと小上がり和室の両方から同じテレビを楽しめるように配置するのは難しい場合があるかもしれません。

お掃除ロボットを使いにくい

お掃除ロボットの稼働範囲が制限されてしまうことも、小上がり和室を作るデメリットの一つです。フラットな場所はお掃除ロボットに全自動で任せられるものの、小上がり和室の段差は超えられないため、手で持ち上げて移動させる必要があります。外出中にお掃除ロボットを稼働しても、帰宅後に小上がり和室のみ掃除をすることになり、かえって手間が増えたと感じるケースも少なくありません。

費用がかかる

小上がり和室の設置には、フラットな和室を施工するよりも費用がかかります。段差部分に収納スペースを作る場合はさらに費用が追加されるため、思いがけず高額になることもあるでしょう。

一口に小上がり和室といっても、広さやデザインなどによって施工費が変動します。まずは予算を決め、予算内で実現可能な小上がり和室を計画することが大切です。

小上がり和室を新設する際の費用は、広さによって異なります。一般的に選ばれるのは3~4.5畳の広さで、設置費用は15万~25万円程度が相場です。なお、畳の種類や素材も費用に影響します。価格の目安は以下の通りです。

【種類】

  • 縁付き畳:約1万1,000円/畳
  • 縁なし畳:約1万7,000円/畳

【素材】

  • イ草:約1万1,000円/畳
  • 和紙:約1万3,500円/畳
  • 樹脂:約1万3,500円/畳

テレワークスペースや来客用の寝室など、状況に応じて小上がり和室をプライベートな空間にしたい場合は、間仕切りを設けておくと良いでしょう。また段差を利用して掘りこたつを作ることも可能です。その場合にかかる追加費用の目安は10万円前後です。

広さやデザイン、使用する畳によって費用が変動するため、どのような小上がり和室を作りたいのかを明確にし、どの程度の予算が必要なのかを把握しておきましょう。

後付け費用

小上がり和室を後付けで設置する場合は、リビングのリフォームと合わせて行うのが一般的です。施工費用は、小上がり和室の設置+リビングのクロス張り替えで、約50万円前後が目安になります。

ただし、小上がり和室とリビングの広さによっては費用がさらにかかる可能性があるため、あくまでも目安として参考にしてください。同時にリビングの床貼り替えなどの別工事を行う場合も同様です。まずはリフォーム会社に相談し、見積もりを取って検討しましょう。

小上がり和室を設置した建築実例

ここからは、小上がり和室を設置した注文住宅の建築実例を紹介します。希望の空間を作るための参考にしてください。

3畳ほどのコンパクトな小上がり和室

3畳ほどのコンパクトな小上がり和室

リビングと同じ空間でくつろげる憩いのスペースとして、3畳ほどのコンパクトな小上がり和室を設置した実例です。間仕切りは柱のみで開放感があり、リビングとの一体感が保たれています。

キッチンからも近く、食事の支度や後片付けをしながらも小上がり和室で過ごす家族の様子を見守れます。客間として使用する際も、自然なコミュニケーションができることが魅力です。

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リビングに高めの小上がり和室

リビングに高めの小上がり和室

和の要素を取り入れたいという希望により、和室ではなく小上がり和室を採用した実例です。特徴的なのは、小上がりの段差が一般的な物より高めに設計されていることです。段差部分はたっぷりとした収納スペースで、小上がり和室への上り下りには階段を利用します。

リビングに高めの小上がり和室

安全性を確保するため、小上がりの周囲をぐるりと柵で囲っていますが、開放感を損なわないデザインを採用しました。機能性とデザイン性を兼ね備え、家全体の雰囲気に調和した実用性の高い小上がり和室となっています。

建築実例:和を要素を一滴 小上がり畳の立体的な住まい

オープンタイプの小上がり和室

オープンタイプの小上がり和室

リビングの一角に設けたオープンタイプの小上がり和室で、主にキッズスペースとして利用しています。畳の色はフローリングに近い色をチョイスし、室内全体に統一感を持たせました。

段差は低めに設計されており、リビングとの移動がスムーズに行えるため、家族が快適に過ごせます。余計な物を置かないシンプルなインテリアで、リビングと一体感のある開放的な空間です。

建築実例:屋上のアウトドアリビング

キッチン横の小下がり和スペース

キッチン横の小下がり和スペース

キッチン横に配置した和のスペースで、主に子どもの遊び場として活用している実例です。小上がりとは反対に段差を下げており、子どもが転落してけがをする心配がありません。

引き込み式の可動扉のため、閉めれば独立した和室に、開け放てばリビングの一角に設けた畳コーナーになります。収納には吊り押入れを採用し、空間を有効活用しています。

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費用をかけて小上がり和室を作っても、使い勝手に満足できなければ意味がありません。快適な空間を実現するために、小上がり和室を設置する際の注意点を押さえておきましょう。

必要な分の広さにする

リビングに小上がり和室を設ける場合、3~4.5畳程度の広さを採用するケースが多く見られます。リビングとのバランスが良く、客間や家族の団らんに使いやすいためです。6畳の場合は間仕切りを設けるケースが多く、独立した部屋としても使用できます。

使用目的によって必要な広さは異なり、例えばゲストルームとして利用する場合、布団を2組敷くには最低でも4.5畳は必要です。またプライバシーを確保するための間仕切りも欠かせません。実用性に優れた空間にするためにも、まずは小上がり和室をどのように使いたいのかを明確にし、全体のバランスを考慮しながら必要な広さを決めましょう。

間仕切りの有無を決める

間仕切りがないオープンタイプの小上がり和室は、リビングの延長として開放感を楽しめます。ただし、音やニオイも共有するため、寝室として使用するのは難しいでしょう。一方、間仕切りを設けた小上がり和室はプライバシーが確保されますが、広さによっては圧迫感が生まれることもあります。

間仕切りがあるかないかで空間の使い方や快適性が変わるため、必要に応じてオープンにもクローズドにもできる可動式の間仕切りがおすすめです。障子や半透明の引き戸であれば、視覚的な圧迫感が少なくしっかりとした仕切り効果が得られます。

安全な段差で設計する

安全性や利便性を考慮すると、小上がり和室の段差は30~40cm程度がおすすめです。低い方が安全と思われがちですが、10cm程度の段差はつまずきやすく、かえって危険です。段差部分に少し腰掛けたいときも、低すぎると足腰に負担がかかります。

階段の段差は約20cm、立ち座りしやすい高さは30~40cm程度とされています。段差部分に30~40cmの高さがあれば腰掛けやすく、収納スペースを確保することも可能です。ただし、年齢や健康状態によっては上り下りに負担を感じることもあるので、やや低めの高さに設定するか、部分的に小さな階段を設けておくと、より使いやすい小上がり和室になるでしょう。

天井の高さは身長とのバランスを考える

小上がり和室を設置する際、天井高とのバランスは重要です。小上がり和室はリビングよりも一段高い位置にあるため、天井が近く感じられます。また小上がり和室自体が空間を圧迫するため、開放感を演出する工夫が必要です。

注文住宅には、天井の高さを自由に設定できるという強みがあります。リビング全体の天井高を高めにする他、吹き抜けや勾配天井を採用すると室内にダイナミックな開放感が生まれ、小上がり和室の圧迫感が軽減されるでしょう。

メンテナンス性を考慮する

小上がり和室を作る際にデザインにこだわるのは大切ですが、メンテナンスの手間も考慮することが重要です。自然素材の畳を長持ちさせるには、定期的かつ適切なお手入れが欠かせません。

手間を減らすには、耐久性やメンテナンスのしやすさを優先した素材選びをすると良いでしょう。例えば和紙の畳は、イ草よりも耐久性に優れ、カビやダニが発生しにくいという特徴があります。また樹脂畳は水に強くお手入れが簡単です。特に和紙畳はカラーバリエーションが豊富なため、色にこだわりたい方にもおすすめです。

リビングに設けることが多い小上がり和室は、家族でくつろいだり客人をもてなしたりと、多目的に使用できるスペースです。段差部分を収納に使用することもでき、限られた床面積を有効活用できますが、快適な空間にするには天井高や広さ、リビングとのバランスを考慮する必要があります。希望の住まいを実現するために、実績豊富な施工会社に相談するようにしましょう。

タイセーハウジングでは平成21年の創業以来、1,000棟以上の住宅の施工に携わってまいりました。お住まいになった後もストレスなく家族が幸せに過ごせる家づくりを目指しています。タイセーハウジングは土地探しから資金計画、設計・施工、アフターメンテナンスまで一貫したワンストップサービスを提供しています。

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